デタラメなデータで強行採決された高度プロフェッショナル制。忘れてはならない第196回国会の異様さ「5~6月」編

Tony / PIXTA(ピクスタ)

 第196回国会が閉幕してから早くも1か月が過ぎた。異質で異様だった前国会を、改めて時系列で数回に渡り振り返ってみたい。(※国会の議事録の性質上、全発言を引用するととても冗長になるため、一部抜粋しているものがあるが、大意は変わっていない)  前回に引き続き、今回は自民党議員のさまざまな暴言や高度プロフェッショナル制度を巡り繰り返された不誠実な答弁を中心に5~6月の国会を振り返ってみたい。

党首討論の歴史的価値

 5月の終わり、約一年半ぶりとなる党首討論が開かれた。  全党首を合わせても45分という極めて短い時間ではあり、また、野党第一党である枝野幸男代表は、森友問題や加計問題について問いただしたものの、安倍総理は枝野氏よりも長く答弁するなど、討論は噛み合わなかった。  例えば、 “内閣総理大臣の名前を勝手に使われて、物事をうまく運ぼうとしていた加計学園に対しては、どうなっているんだ、これはしっかりと、具体的なことをしっかり説明してもらわなきゃ困ると総理大臣としては言わなきゃおかしいじゃないですか”枝野幸男 代表(立憲民主党) という枝野氏の質問に対して、安倍総理は下記のように述べている。 “まずこの財務省から出てきた文章について一方的な批判がありましたから、それにもお答えをさせて頂かなければなりません。それはですね、先ほどこれは申し上げていることでもございますが、妻にに対しては、もうこれも何回も国会でお答えをさせていておりますし、今の同じご批判に対しては先の予算委員会でも、私からあるいは財務省からも既に説明をさせていただいていることでありますから、しかしまたそういう御指摘がございましたからこれはお答えをさせていただかなければなりません。  妻は何度か留守番電話に短いメッセージをもらいましたが、土地の契約に関し具体的な内容については全く聞いていないということはもう何回か申し上げた通りであります。そして優遇を受けられないか、と総理夫人に照会という件は、あくまでも籠池氏側が夫人付きに宛てた手紙に書かれていただけであります。そしてそれに対してどのように理解をしたかということについては先般28日に理財局太田局長からですね、このいわば文章書いたものから聞いた、その趣旨についてご説明をすでにさせていただいているわけでありまして、いま申し上げたこととまさに趣旨は同じであるということでありました。  ですから、それをことさらですね、自分が、いわば政局的に持っていこう、政府やあるいは私や私の妻にこの問題を持っていこうということを考えるからですね、いわば本当の本質からどんどん逸れていくわけでありまして、あくまでも最初申し上げましたように、なぜこれはああいう値引きがされたかということをしっかりと突き詰めることが大切であって、そして今それは財務省においてしっかりと調査をし、そしてまたあるいは今、検察当局によって調べがなされているんだろうとこう思うところでございます。  そして、加計学園につきましてはですね、まさにこれはあのーもうすでに何回も申し上げておりますように、指摘された日にちには、私も私は会っていないということは申し上げた通りであり、また加計理事長もそう発言をされているところでございます。  その後どういう経緯でああいうものになったのかということについての加計学園からの話もあり、また今治市からもあったわけでございます。  ただ、この問題についてはですね、まず、見失ってはならない視点はですね、私たちが何をやろうとしていたかというとでありました。獣医学部が50年間も新設されなかったこと、これはおかしいということであります。  そしてこの問題についてですね、この問題についてはまさに様々なこれ抵抗があった。具体的に言えば獣医師会からの大変な政治家と政治に対する働きかけがあったのは事実であります。そういう中において、なかなかこれ実現できなかった。そして実際に作ったらこれは、倍率は16倍になっているわけでございまして、多くの大学短大において定数を割れている中、定員割れとなくている中においてですね、16倍になる学部を新設をしなかったということ自体も問題ではないか、そう思うわけであります。まぁそこで、では抗議しないのかということでありますが、まさにこれは民間のですね、学園がすでにコメントを出しているわけでありまして、政府としてそれに対して、我々はコメントする立場にはないわけであります。  大事なことはプロセスが公正公平であったがどうかということではないかと、こう思うわけでございます。みなさんからですねでは私が訴えないのかとも言われていたわけでございますが、私は、籠池氏に対しても訴訟は起こしておりませんし私も起こしていない。訴訟をになればですね、これは時間がかかる。そういう時間を私の感情のために時間を、総理の時間を費やすべきではないと、こう考えたところでございます。”(参照:党首討論、議論は本当に「平行線」だったのか? 論点ずらしで逃げる安倍答弁を書き起こしてみた:ハーバービジネスオンライン)  枝野氏は、討論終了後このように述べた。 “意味のないことをだらだらとしゃべる総理を相手に、今の党首討論という制度の歴史的意味は終えたことが今日の討論を通じてはっきりした”枝野幸男 立憲民主党代表 ――5月30日 党首討論後のぶら下がり記者会見にて
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議会への侮辱、人権を無視する与党議員発言
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