しかしながら、
小選挙区制の民意を反映しにくい点は、選挙制度として致命的な欠点です。
首相指名、都道府県知事、市区町村長の選挙が小選挙区であることを避けられないとすれば、それ以外の選挙を民意に比例的な選挙制度とし、より
多様な民意を反映できる立法と行政を実現する必要があります。民意に比例的な選挙制度とは、簡単にいえば、30%の考え方は30%の議席、20%の考え方は20%の議席と、考え方の支持割合と議席割合を近づける制度のことです。
それでも、行政の長は小選挙区制(多数派)で決まるので、完全に世論に比例的な立法や行政になるわけではありません。ただ、
国会・議会が世論に比例的な構成であれば、行政も国会・議会を軽視しにくいのではないでしょうか。
そして、その
背後にいる有権者の意見も軽視しにくくなり、より対話と合意形成に基づく政治・行政が展開されることでしょう。
さて、小選挙区制に欠点があるとして、民意を政治や行政に反映させるために、どのような制度が望ましいのでしょうか。また、選挙制度の他に改善すべき点はないでしょうか。それらの課題については、機会を改めて解説します。
<文/田中信一郎>
たなかしんいちろう●千葉商科大学特別客員准教授、博士(政治学)。著書に『
国会質問制度の研究~質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/
@TanakaShinsyu