吉村洋文大阪市長の「聖域なき教育改革」から迸る「ダメ上司あるある」感
2018.08.09
7月31日に発表された小中学生の全国学力テストで大阪市が政令指定都市の中で2年連続となる最下位だったことが判明した。その結果を受けた大阪維新の会の政調会長にして大阪市長の吉村洋文さんが吠えました。
「万年最下位でいいと思うなよ!」
この言葉は明らかに大阪の教職員に向けられたものです。大阪維新の会は橋下徹市長の時代から「聖域なき教育改革」なるものを続け、民間から校長先生を公募しまくり、連れてきた校長がだいたいポンコツという地獄に陥り、教職員は疲弊してきました。自らの失策を棚に上げ、子供の学力が上がらない責任を教職員に押しつけている。残念ながら、吉村洋文さんは世の中に蔓延る典型的な失敗する上司なのです。
「勉強ができるのと勉強ができないの、どっちがいいんだ?」と聞かれたら、そりゃ誰だって勉強ができる方がいいと答えるに違いありません。
プロ野球選手やYouTuberになるならともかく、医者や弁護士を目指そうという子供がいるなら、資格を取れるぐらい勉強しないとなれない仕事なのですから、夢に向かって勉強するしかありません。それはプロ野球選手になりたい子供が毎日家の外で100回素振りをするようなものです。しかし、まだ将来の夢が決まっていない子供が、あとからどんな職業にもなれるように勉強しておくことはあっても、画家や音楽家になりたい子供には勉強もそこそこに豊かな芸術性を励んだ方がよほど大物になれると思います。
よく子供たちから「何のために勉強するのか?」と質問されることがあると思いますが、勉強は目標を達成するためのプロセスの一つでしかなく、プロ野球選手を目指す子供たちは、万が一、プロ野球選手を諦めざるを得なかった時のための保険として勉強することはあっても、目標を達成するために最も必要なのは「野球の練習」です。そんな前提があった上で、吉村洋文市長はどうして子供の学力を上げたいのでしょうか。それは「万年最下位でいいと思うなよ!」という言葉が象徴するように、吉村洋文さんご自身が「最下位がイヤだから」です。子供たちのためではなく、教育に力を入れている自分が市長をやっているのに最下位だなんて恥ずかしいからです。
実は、この吉村洋文市長とまったく真逆の思想で「子供を守る」を公約に掲げ、先日の東松山市長選に立候補したのが、東大教授の安冨歩さんです。
安冨歩さんは、学校でイジメられている子供が目の前にいても、それを横に置いて授業を進めてしまう現代の学校教育を批判しています。
子供の個性や多様性を殺してしまう「勉強することが正義」という学校教育が、エリート官僚や政治家を育て上げ、現代の歪んだ世界を作り出している。この話は私のnoteで中間分析レポートがアーカイブとして残されているので、ぜひ読んでみてください。見事なほどに対照的なのですが、吉村洋文市長がやろうとしていることは「子供のため」と見せかけて、本当は自分のためです。もし本当に子供のためを考えているなら「万年最下位でいいと思うなよ!」という言葉は出てこないはずです。
“中学生の英語力。大阪市は52.2%で全国5位。橋下市長時代から英語イノベーション事業を開始。市内全中学校にネイティヴを派遣。英語教材はフォニックスを採用。小学校の先生でも授業ができる仕組みを作り、僕の時代からは市内全小学校の低学年から英語に触れる授業を展開。” これは今年4月、大阪市の中学生の英語力が全国5位だったという喜ばしいニュースを受け、吉村洋文さんがツイートしたものです。 どうして中学生の英語力が上がったのか。もちろん、教えている先生方の創意工夫が素晴らしく、子どもたちの能力を伸ばしたからだと思いますが、吉村洋文さんは「橋下徹さんが市長だった時から英語イノベーション事業を開始し、英語教材にもこだわり、自分が小学校低学年から英語に触れる授業をしたから」だと主張しました。 要するに、良かった時には自分たちのお手柄だと言い、悪かった時には教師の能力が低いからだと言うのです。そう、これは皆さんのまわりにいる「クソみたいな上司」とまったく一緒です。そして、いつの時代もクソみたいな上司は責任を取らずにのさばり続け、結果を出すことはありません。なぜなら、部下のモチベーションを著しく下げるからです。 考えてもみてください、お手柄は自分たちのものになり、失敗の責任だけはきっちりと部下のものになるのですから、大阪市内で教師をすると、給料が下がることはあっても上がることはないのです。これで子供のためにモチベーションを保てない奴はプロ失格だとか言われてみてください。グーで殴りたくなるんじゃないでしょうか。中学生の英語力。大阪市は52.2%で全国5位。橋下市長時代から英語イノベーション事業を開始。市内全中学校にネイティヴを派遣。英語教材はフォニックスを採用。小学校の先生でも授業ができる仕組みを作り、僕の時代からは市内全小学校の低学年から英語に触れる授業を展開。https://t.co/6qSgYTlHDf
— 吉村洋文(大阪市長) (@hiroyoshimura) 2018年4月7日
子供の学力を上げた先に何があるのか
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