日本のネットを埋め尽くす「拡散装置」が誘導する日本の右傾化の構図

 では、右寄り以外の政治家はどうなのか? 立憲民主党の比較的有名な政治家を調べて見ると、そのアカウントのツイートを多くリツイートしている中に同様にボットの疑いのあるアカウントが見つかった。一般的な小説家や評論家でも同様にリツイート数上位にはボットの疑いの濃いアカウントが現れる。  ただし、自民党議員や右寄りの発言の多いアカウントについている拡散装置と、それ以外のアカウントについている拡散装置ではひとつの大きな違いがある。前者のリツイート上位を占めるのはネトウヨ・アカウントのみの場合がほとんどだが、後者においてもネトウヨ・アカウントがリツイート上位に現れているのである。その逆、つまり右寄りアカウントに付く拡散装置のリツイート上位に左翼アカウントやアフィリエイト目的のアカウントが上位に来ることは今のところ観測されていない。  拡散装置に組み込まれているネトウヨ・アカウントの中には、「右寄り以外もフォローし、リツイートする」しているものもあるのだ。理由はいくつか考えられる。たとえば……単純なプログラムで特定のキーワードを拾って反応しているため、あるいは次回説明するロシアのように右でも左でもいいから過激なものを支援するためなどだ。  ツイッターは特に顕著だが、それのSNS以外でもこうした拡散装置の浸食は広がっている。拡散装置の利用ではロシアが先進的であり(ほめ言葉ではなく皮肉)、西側によってある程度暴露されているので、次回はその事例を紹介したいと思う。 *Mentionmapp( mentionmapp.com )を使っての解析では同社の創業社長ジョン・グレイ氏の協力を得て、市販されているものではなく、より深い解析が可能な社内用バージョンを使用している。この場を借りしてお礼を申し上げます。 ◆シリーズ連載「ネット世論操作と民主主義」 <取材・文/一田和樹> いちだかずき●IT企業経営者を経て、綿密な調査とITの知識をベースに、現実に起こりうるサイバー空間での情報戦を描く小説家に転身。『犯罪「事前」捜査』(角川新書)、『原発サイバートラップ』(原書房)、『サイバー戦争の犬たち』(祥伝社)、『公開法廷 一億人の陪審員』(原書房)、『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)など著書多数
いちだかずき●IT企業経営者を経て、綿密な調査とITの知識をベースに、現実に起こりうるサイバー空間での情報戦を描く小説やノンフィクションの執筆活動を行う作家に。近著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 日本でも見られるネット世論操作はすでに「産業化」している――』(角川新書)では、いまや「ハイブリッド戦」という新しい戦争の主武器にもなり得るフェイクニュースの実態を綿密な調査を元に明らかにしている
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