日本のネットを埋め尽くす「拡散装置」が誘導する日本の右傾化の構図

一田和樹

TheDigitalArtist via pixabay(CC0 Public Domain)

ツイッターの拡散装置

 2017年12月にドイツのエアランゲン=ニュルンベルク大学のファビアン・シェーファー博士が、『Japan’s 2014 General Election: Political Bots, Right-Wing Internet Activism, and Prime Minister Shinzō Abe’s Hidden Nationalist Agenda』(※参照)と題する論文を公開した。
(編集部注:同論文については、本稿執筆者の一田和樹氏が本年3月に『THE ZERO ONE』に寄稿した記事や6月に『FACTA』に寄稿した記事でも詳しいのでぜひ御覧ください)

 2014年の衆議院選期間中におけるツイートの統計分析を行った結果である。この論文によれば2014年の衆議院選期間中の政治に関するツイートの83.2%がコピー(そのままのコピーではない類似ツイート含む)であり、「ナショナリズム」という隠れたキーワードがあったと分析している。逆に言うとオリジナルの発言は、たったの16.8%に過ぎなかったことになる。

 分析の対象になったのは2014年12月8日から30日の間の政治に関係するツイートで全体が54万2584件、コピーが45万1530件、オリジナルが9万1054件だった。シェーファー博士はネットにあふれたコピーの裏にはボット(プログラムで自動的に運用されているアカウント)があったとしている。

 アメリカ大統領選やヨーロッパ各地の選挙を見るまでもなく、世界中にネット世論操作のためのボットやトロール(人手によるアカウント)があふれている。ヨーロッパやアメリカでは、危機感を持ってこの事態に対処しようとしており、そのため調査や分析結果が発表されている。それに比べると日本ではこの分野の研究発表が極端に少ない。

 ネットを政治の道具にしていないわけではない。2013年にネットでの選挙広報活動が解禁され、自民党が政権を奪還した際に、ネットでの選挙民の動向のデータを収集し、緻密に分析して活動に生かしていたことはよく知られている。資料を元にその当時の体制を整理すると図1のようになる。

 自民党に限らず他の政党でもネットへの対応はしているだろう。当然、次の段階として分析するだけでなくネット世論操作を仕掛けている。クラウドワークスというサイトで特定の民族、特定の政治団体を攻撃したり、自民党の政策を支持したりする書き込み要員の募集が繰り返し行われていたことから、その可能性が垣間見える。

 なお現在は、「図2 クラウドワークスに掲載された政治系記事作成募集掲載中止の告知」のようにあまりに話題になったため掲載を控えている。

 昨年発表されたシェーファー博士の論文はこうした疑問を統計的に明らかにしたものだった。やはり日本でもネット世論操作は行われていた。

 以前、この論文を記事にした際、左翼でもボットを使っているとか、アフィリエイトや商業目的で使っているものもあるといったご指摘をいただいた。それらのご指摘はもっともである。ただしだからといって、右寄りのボットが多数活動している事実がなくなるわけではない。

 本記事は現在日本に広がっている右傾化とネット世論操作を中心に、現在進めている分析作業も合わせてご紹介する。

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右寄り文化人フォロワーの傾向

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