月の支出は5万円だけ。「脱・会社」「脱・消費」「脱・東京」の果に辿り着いた生活とは?「退職者量産バー」元店主の移住生活に迫る

「脱・会社」「脱・消費」「脱・東京」。誰でも、やろうと思えばできること

月を眺める

部屋の窓からのんびりと月を眺める。何にも替えがたい、贅沢な時間だ

 脱・東京をして2か月半の俺の暮らしというのは、完全自給の暮らしをしているわけでもないし、それを目指しているわけでもない。パソコンやスマホのように、今後利用が広がる AI やIoTも、暮らしや仕事を本質的に豊かにしてくれるものは使う。無理してまで完全な「脱・消費」を目指す必要はない。  だが、手と足と頭を使わない快適さや便利さと、その代償にクレジットカードや財布から、チャリンチャリン、ひらひら~っとお金が落ちてゆくような「The 消費」には関心がない。そのために長時間働くとか、ストレスのある仕事をするとか、就職して「9時5時」で働くなんて、まっぴらごめんだ。 「脱・会社」「脱・消費」「脱・東京(都市)」へと少しずつ移行してきた俺は今、47歳のオッサンになった。30歳で「脱・会社」した時は、米は研げない、目玉焼きは焼けない、ノコギリも使えない、生き物は怖くて触れない、土の上にはキモくて座れない……そんな情けないヤカラだった。  当然、不安だらけで生きていた。あれからかれこれ17年、少しずつできることが増えてきた。まだまだできないことも多々あるが、少しずつやっていけばいい。不安はほとんどないに等しい。「まぁ、何とかなる、ケセラセラ」と思えるようになった。呑気におおらかでいられる。  俺だからできるのではない。移住してきた誰もが、以前は何もできなかったのに今では何でもできるようになっている。最初は俺のほうができたのに、とっくに抜かれちまった。そう、誰だってやろうと思えば、できることは多いのだ。  さ、そろそろお後がよろしいようで。俺の今をさらっと書いてみた。会社で悩んでいる人、消費に踊り踊らされている人、都会にもう飽きた人、ご参考までに! 【たまTSUKI物語 第2回】 <文/髙坂勝 写真撮影/倉田爽> 1970年生まれ。30歳で大手企業を退社、1人で営む小さなオーガニックバーを開店。今年3月に閉店し、現在は千葉県匝瑳市で「脱会社・脱消費・脱東京」をテーマに、さまざまな試みを行っている。著書に『次の時代を、先に生きる~まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ』(ワニブックス)など。
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会