「NHKから国民を守る党」議員が松戸市長選運動中に市民メディアに暴行。その顛末

 人々が政治や選挙に無関心を極めた結果、「こんな人たちが議員をやっているのか!」と驚くような事件が発生しました。6月10日投開票の松戸市長選で、「NHKから国民を守る党」の市議2名が市民メディアの記者に対して暴行し、肋骨骨折の重傷を負わせる事件が起こったのです。暴行するだけでも驚きですが、その市議は「立花代表はヤクザ、私はチンピラだと代表も私も自覚し自負してます」とツイート。「あんなゴミに情けや優しさは不要」とまで発言しています。  事件の発端は、市民メディアの記者が「公約を教えてください」と質問したことでした。候補者なら誰もが聞かれるであろう、ごくごく基本的な質問だと思います。しかし、過剰反応した「NHKから国民を守る党」の立花孝志区議、大橋昌信市議が候補者に代わって「質問には答えない」と発言し、逆に市民に向けてカメラを向け始めました。そのため、「どうして答えないのですか?」と質問すると、恫喝するように記者を追い払おうとして「退去命令を出す」と主張し、公道でやっている選挙活動の取材に対して謎の「退去命令」なるものを出してきたのす。「退去命令」の根拠を問ううちに、今度は「私人逮捕だ」と言い出し、記者たちの手首を掴み、さらには手首をひねり、その状態のまま引っ張ったため、記者が転倒し、肋骨を骨折させました。  その後も手首を掴んだまま地面を引きずる様子が確認でき、これらはすべて映像として残されています。これを最初に書いておかなければならないのですが、この事件、「私人逮捕」の要件は満たしていないため、NHKから国民を守る党の議員による拘束は明らかに不当です。

「NHKから国民を守る党」の事件的背景

 実は、「NHKから国民を守る党」のメンバーは、これまでにも数々の事件を起こしており、NHKの受信料を徴収する下請け会社のスタッフの個人情報をネットで晒したり、スタッフを追いかけて掴んだりと、日頃から暴行としか思えない動画を自らYouTubeにアップし、立花孝志さんはYouTubeの広告収入で月額200万円ほど稼いでいたと話していました。  NHKの受信料問題についてはさまざま意見があるかもしれませんが、今のところ、NHKが受信料を請求するのは合法であり、テレビを見られる環境がある以上はその人の経済的な事情に関係なく受信料を支払わなければなりません。「こうした制度を変える必要がある」という主張に関しては一定の理解が得られるものと思いますが、NHKの集金人を暴力や恫喝で追い返すという方法でこの問題が解決するでしょうか。とはいえ、受信料を請求する下請け会社の末端のスタッフを恫喝する様子はセンセーショナルなので、視聴者にはウケます。こうしてアクセス数を伸ばし、つい最近まで16万人のチャンネル登録者数を誇る人気ユーチューバーの1人だったのです。  しかし、この事件が起きる前日、立花孝志さんのYouTubeアカウントは永久凍結され、配信資格を失いました。これは5ちゃんねる(旧・2ちゃんねる)の「ハンJ民」や「なんJ民」と呼ばれる人たちがYouTube上に蔓延る差別やデマが含まれる動画をYouTube事務局に報告し、動画を削除する「ネトウヨ春のBAN祭り」という活動の一環で、竹田恒泰さんやテキサス親父さんなどのYouTubeアカウントが停止に追い込まれる中、立花孝志さんの動画も凍結に追い込まれたのです。  立花孝志さんは平均で月額50~80万円の広告収入を得ていたようなので、少なく見積もっても600万円以上の年収を失ったことになります。こうした状況の中で、松戸市長選の直撃インタビューを受けていたので、イライラしていたのかもしれませんが、日頃から同様の恫喝や暴力を繰り返していたことは間違いありません。
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