外国人はトイレの音消しを「おもてなし音楽」と思っている!? お国で違う「音への感覚」
2018.06.07
橋本愛喜
今月15日から全国で民泊のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行される。
これにより、隣の家からある日突然、見知らぬ人らが出入りし始めるようになるかもしれない。とりわけ、外国人旅行者が利用するとなると、懸念されるのが文化的摩擦によるトラブルだ。
以前、日本人と外国人の「色」や「時間」に関する感覚の違いを紹介したが、こうした違いは、その他にも多く存在する。(参照:「なぜアメリカ人は真っ青なケーキを平気で食べるのか? その理由がほぼ判明」、「なぜ日本人は遅刻に異様に厳しいのか? 他国の人との比較から考えてみた」)中でも「音」に関しては、訪日外国人との接触や、海外移住の機会が増える昨今、互いのQOL(Quality of Life:生活の質)の低下に直結する問題に発展するケースも少なくない。
今回は、日本と外国において「音」に関する感覚の違いにどのようなものがあるか、筆者のニューヨーク滞在時や日本語教師時代の経験をもとに、多角的に紹介してみたい。
日本には、他国には見られない「音」に対する独特な感性がある。
鹿威(ししおど)しや小川のせせらぎに風情を感じ、「無音」や「静寂」、「余韻」なども1つの音として捉える。
雨の音1つとっても、しとしと、ざーざー、ぱらぱら、ぽつぽつなど、音だけで細かな情景や感情までをも描写することができる。蝉の“声”を以って“閑さ”を表現する松尾芭蕉の歌は、まさに日本の音の感性をそのまま表した「心」といっていい。
そんな自文化を引っ提げて、世界の価値観とエネルギーが集まるニューヨークに住むと、バケツをひっくり返したような雨が降っても、その音が耳に入ってこないほどひっきりなしに、かつ日本では考えられないような音が頻繁に聞こえてくる。
1台の車がクラクションを鳴らせば、前後左右の車が負けじと数倍の長さでもって応戦。その車列をかき分けて進む緊急車両の爆音サイレンは、むしろこっちが病気になりそうになるほど大音量だ。
タウンハウス(アパート)の上階から聞こえる縦横無尽な子どもの足音には「元気な子だ」と許容できたが、その後を必死に追いかける犬の足爪音を聞いた時には、さすがに天井の薄さとその犬の忠犬ぶりに“天”を仰ぎ、隣に住む大家にそれとなく相談したこともあった。
しかし、生粋のニューヨーカーはこうした生活音に寛容で、音先を振り向こうともせず、相談にやってきた筆者を「子どもの足音より犬の足爪音が気になるのか」と不思議がるのだ。
こうした小さな音に神経をとがらせてしまう原因は、日本の繊細な音意識に他ならないのだが、それがより顕著に出る場所がある。トイレだ。
日本には、古くから「用足し音」を恥ずべき音だとする文化がある。江戸時代には、水を溜めた「音消し壺」なるものの栓を抜き、下に敷き詰められた瓦に水を当てて「音消し音」にしていた。
国内のトイレが「汲み取り式」から「水洗式」へと移行して以降は、水を流しながら用を足す、いわゆる「音消し水」が定着していったが、世間の節水意識が高まると、各大手トイレメーカーは「トイレ用擬音装置」を相次いで開発。
2014年にTOTOが行ったアンケート調査では、女性回答者の91%がこの擬音装置を「使用経験あり」とし、男性回答者も22%が同装置を「設置してほしい」と答えるほど需要が拡大している。
しかし、外国人にとって、排泄音はただの“物理音”。彼らに言わせれば、「上から落ちて来るモノが音立てて何が悪い」、「トイレに何しに来ているのかは音が聞こえなくても明白」であり、それゆえ、初訪日する外国人の中には、この擬音装置音を「リラックスして用を足せるようにする日本の“おもてなし音”」だと本気で思っている人が驚くほど存在する。
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