行方知れずのアルゼンチン海軍潜水艦、遺族への賠償があまりにも僅かな額で非難轟々

「まだパパが乗船していると思っている」と2歳半の息子のことを語るノエリア夫人のことを報じる「Clarin」紙

 昨年11月15日に消息を絶ったアルゼンチンの潜水艦ARAサンフアン(乗組員44名)について、本サイトでも何度も報じてきたが、今もその家族そして国民の前にその解明は一向にされていない。  海軍本部の建物内部には今も家族に用意されている士官室で2家族が寝泊まりをしているという。そこでは、いつも下士官が二人、6時間毎の交代で24時間体制で家族が何か困った時の為に待機しているそうだ。また同本部の近くには海軍に属しているホテルにも完全食事サービス付きで20人が滞在している。誰もが海軍本部に入る情報を時を失うことなく即座に入手する為に近くで生活しているのである。しかし、外国から派遣された捜査隊は既に全て退去している。

乗組員の安否を待つ家族たち

 4月14日付の「La Nacion」は、いまだ愛する人の居場所もわからずにいる家族の気持ちを報じている。  乗組員の一人で料理担当の下士官アルファロ・ロドリゲスの夫人ミリェイェス(37歳)は、子供を学校への送り迎えで外出するとき以外は、夜11時まで海軍本部にいるそうだ。彼らがこのようにしている理由は、「それが海軍への精神的な圧力となって彼らが我々に真相を明らかにしてくれるようになると考えているからです」という。「半年、1年、2年、3年、海軍が真実を言うまで我々はここにいます。彼らは何か隠しています。心理的な傷は非常に大きいのです」と不満を露わにする。 「Clarin」が報じたのは、機関士主任であるダンテ・ウーゴ・アラマヨの妻であるノエリアさん(30歳)の言葉だ。彼女は子どもについて「3月から幼稚園に通うようになってから少し元気を取り戻してくれました」と語り、「よくパパの名前を口にし、まだ乗船していると思っているようです」と語っている。

家族が受け取る賠償金が低すぎる

 サンフアンの乗組員には子供が全員で57名いる。政府は4月17日付で、幼稚園から大学までの学費を政府が負担すべく奨学金を支給することを正式に発表した。基本給9500ペソ(47500円)を対象に幼稚園の場合はその35%、小学校40%、中学校50%、高校か専門学校55%、大学60%、年間10回払いで、最高額ひと月5700ペソ(28500円)までを政府が支給するとした。なお、7月から基本給は10000ペソ(50000円)となる。  しかし、政府が奨学金を支給するのを決めたのには理由がある。それは、家族が受け取る賠償金が余りにも低過ぎるからである。なんと、乗組員44名の内の32名は埋葬費として3800ペソに保険金44330ペソの合計48130ペソ(24万円)が支払われるだけなのである。これが海軍の乗組員が義務として懸けて来た保険金の結果なのである。一方、他の12名はそれ以外に個人で別枠で懸けていた生命保険とを加算して603180ペソ(300万円)から822230ペソ(410万円)が支給されることになっている。(参照:「La Nacion」)  乗組員の家族はその賠償金として支給される金額の余りの低さに憤慨を隠せないでいる。また、32名と12名の双方の受け取る金額の開きが余りにも大きいために、海軍を始め報道メディアでもそれぞれ家族が受け取る金額の発表は一切避けている。
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