依然として行方が知れぬアルゼンチン海軍潜水艦に絡んで囁かれる不穏な「噂」

白石和幸

Martin Otero via Wikimedia Commons (CC BY 2.5)

 アルゼンチンの潜水艦ARAサンフアン(乗組員44名)の行方は依然不明のままである。昨年11月15日に消息を絶ってから既に3か月以上経過している。

 これまでもいろいろな憶測が飛び交った。しかし、依然として有力な情報は得られておらず、アルゼンチン政府は同艦の確かな情報をもたらした場合に報酬金として9800万ペソ(52億円)を提供することを発表した。(参照:「pagina12」)

 一方、乗組員の家族は米国で深海調査では最先端の技術を持っている企業に捜査を依頼したいと望んで募金活動を始めている。何しろ、調査の契約をするのに2億5000万ドル(275億円)が必要だというのだから大変だ。この高額を募金で集めるのはほぼ不可能であろう。しかし、家族は政府の取り組み姿勢に強い疑問を抱くようになっているのである。(参照:「Ambito」)

募る政府への不信感

 政府が報酬金を出すという方針は裏を返して見れば、乗組員や世論に対し政府はARAサンフアンを見つけることを諦めていないということを見せる為のジェスチャーでしかないように乗組員の家族は感じている。

 その証拠に、唯一深海までの探索が出来る米国の深海調査研究船「アトランティス(Atlamti)」が引き揚げた後、残って捜査を続けていたロシアの海洋調査船、俗にスパイ船とも称されている「ヤンタール(Yantar)」はARAサンフアンが消息を絶ったと思われる地点は当初予測されていた地域よりもさらに沖合だという確信的なものを掴み、その捜査の為の許可をアルゼンチン政府に申請したが、それが却下されたという経緯があるからだ。そして、現在捜査は中断した状態だ。

 政府が捜査に消極的になっている背景には、公にはまだ明らかにされてはいない。そうした情報が、ある「噂」の拡散を後押ししている。それは、“ARAサンフアンがチリ海軍の対潜哨戒機が備えている兵器によって起爆した”という噂だ。

 真偽のほどは定かではないが、ロシアのニュースブログ、『Newsstreet』がクレムリンの国家安保障会議がまとめたという報告書の存在を明らかにし、そこに記された内容をスペイン・ムルシア州の地方電子紙「La Tribuna De Cartagena」や、「The Moscow Times」が記事として取り上げたこともあり、一部で注目を集めているのだ。

 ざっと内容を説明すると、次のような感じになる。

 昨年12月14日、トランプ米大統領がプーチン露大統領に緊急の電話会談を要請したという。その目的のひとつはCIAに協力していたロシア人アレクセイ・ジニューク(Alexei Zhitnyuk)がロシア連邦保安庁(FSB)に昨年11月30日逮捕されたことからであった。このロシア人は海洋調査船ヤンタールの機密情報を掴んでそれをCIAに提供することになっていた。その中でも特に同船に搭載されたアルゼンチンに派遣された自走式潜水艇について関心をもっていたようだ。

 両大統領の電話会談でプーチンはトランプに、「ARAサンフアンが消息を絶ったその日、英国海軍とチリ海軍がフォークランド諸島近郊の南大西洋上で軍事演習を行っていた際にARAサンフアンを撃沈してしまった」と伝えたのである。

 それを裏付けるかのように、ヤンタールは撃沈されたARAサンフアンがチリの対潜哨戒機C-295が搭載した武器によって起爆したことを調査で明らかにしたという。

 しかも、ARAサンフアン乗組員の家族が掴んでいた情報でも、英国海軍の対潜ヘリコプターとチリの戦艦がARAサンフアンを追跡していたということが指摘されていた。それとプーチンのこの発言内容は類似していることもあり、「噂」を信じ込む人も増えているのだ。

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マクリは国際問題発展を恐れている!?

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