在日カタルーニャ人が語る、独立運動。「たとえ経済的不安があっても、独立に賛成する」

lecreusois/pixbay(CC0 Creative Commons)

 昨年末、在バルセロナ日本人の佐藤美佐江(仮名)の証言を紹介した(参照『バルセロナ在住日本人が見たカタルーニャ独立運動「半分以上は独立に対し冷ややか」』)。  さまざまな反響が寄せられたが、一つ確かなことは美佐江はカタルーニャ人の夫と結婚し、カタルーニャ人の子供を持ち、おそらくはカタルーニャで人生を終える、つまりインサイダーだという事実である。  中には「意図的に独立反対に誘導しようとしている」というコメントがあったが、筆者は美佐江とは違いアウトサイダーである。カタルーニャが独立しようがしまいが、それは当事者が決めることだ。  かつて、カタルーニャは独立国だった。カタルーニャ・アラゴン連合王国は地中海全体に版図を広げ、1282年にはシチリアを占領し、イタリア南部をも統治していた時期があった。  言語的にいえば、カタルーニャ語はスペイン語よりもむしろフランス語に近い。もちろん、全く由来が不明でスペイン語とは縁もゆかりもないバスク語ほど違うものではないが、映画「MESSI―頂点への軌跡―」にも、スペイン語圏のアルゼンチンから(註:ちなみにアルゼンチンのスペイン語はかなり強い特徴があり、ほかと大きく異なるのだが本題とは外れるので割愛)メッシ一家がバルセロナへ移住するにあたり、家族が一からカタルーニャ語を習得するため悪戦苦闘する場面が描かれている。  ここで一つ忘れてはならないことがある。  中世の話は置いておいても、カタルーニャを含むスペインは第二次世界大戦には参戦しなかった。それは、1936年から39年まで内戦があり、この内戦でヒトラーの支援を受けながら勝ち抜いたフランシスコ・フランコなる独裁者が参戦を回避したからだ。  この内戦の内容を詳しく描いたのがアーネスト・ヘミングウェイの「誰がために鐘がなる」であり、ジョージ・オーウェルの「カタロニア賛歌」である。  どちらもバルセロナの人民政府側についてファシスト・フランコと戦ったわけだが、ヘミングウェイは反ファシストの義侠心に燃え、オーウェルは共産主義の正体をそこに見て幻滅した。それがのちの傑作「1984」につながる。フランコ独裁は1975年の本人の死まで続いた。  それでは、日本に暮らすカタルーニャ人は現状をどう考えているのか。このたび、筆者はアンナ・コスタ(仮名)という女性と接触することができた。
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家族は、名前をカスティーリャ風に改名させられた
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