在日カタルーニャ人が語る、独立運動。「たとえ経済的不安があっても、独立に賛成する」
アンナの話に戻る。アンナの母親の場合は、フランコ体制時代には名前を変えなければならなかった。そういう弾圧を直接受けた過去があるにせよ、今までは特に政治に対して関心を寄せることもなかったという。
「独立したとして、本当に経済的にやっていけるのでしょうか? EUに入れるかどうかもわかりませんし、現在のお金、つまりユーロが使えるのかどうかも不安ですしね」
だが、スペインというかマドリード政府のやり口に対しても大きな不満があるという。
「私は今遠く日本の地から報道を見ているだけですが、独立投票の日に警察が道路を封鎖して弾圧しようとする姿には本当に心が痛みました。どんな結果が出るにせよ、投票は民主的な手段ですよね。警察・権力者側には民主主義を尊重してほしい、そしてスペイン人でもある私としては平和的かつ民主的に今回の結論が出ることを願っています」
では、アンナが平和的かつ民主的に出ることを望む結論とはどのようなものか、後日あらためて長文で寄せてくれた。
「一番最初にあなたから独立派かどうか聞かれたとき、すぐに“スィ”(イエス)とは答えられませんでした。単語の意味が強すぎるように感じられたからです。
しかし、今は私の家族、そして私自身カタルーニャの独立に賛成です。カタルーニャの底流に独立を求める気風がずっと流れていたのは確かですが、私たち家族はそこには加わっていませんでした。
カタルーニャのルーツに誇りは持っていましたが、あくまでも平和的な共存共栄を求めていました。しかし、ここ数か月の国家警察による弾圧、そしてカタルーニャの自治権を停止する憲法155条の強制執行を見せられ、考えが変わりました。今こそスペインの政治システムを完全に変えなければなりません。
このままだと(現在ベルギー滞在中の)プチデモン・カタルーニャ首相も収監されてしまいます。そんなことになったら、カタルーニャに限らずスペイン全体で誰も自由に意見を表明できなくなってしまいます。ですから今回、今までずっと中道派に投票していた私の家族は明確な独立賛成派に投票しました。
もっとも、今回の選挙においては、理性よりも感情に基づいて一票を投じたという側面が強く、独立派の政党もまだ独立後の明確な設計図を示しているわけではありませんからその点が不安であり、悩みでもあります。しかし、スペイン政府の私たちカタルーニャ人に対する扱いを見たとき、もはや黙っていることはできません。
たとえ経済的不安が伴うとしても、私たちは独立に賛成します」
【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。
雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
公式サイト
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。