カタルーニャ独立問題住民投票終了。混乱の後に残された「分断」の深さ

カタルーニャ州政府の「不実」

 一方、カタルーニャ政府にも問題はあった。というのも、カタルーニャが独立すれば州民の生活は相当なる犠牲を強いられることも説く必要があったが、それは住民投票で勝利するには都合がよくないとして無視して来たことにも重い責任があるからだ。  カタルーニャが外国企業にとって投資先として魅力があるのはカタルーニャがEU加盟スペインにある自治州であるということである。仮に、独立すればEUからの離脱を余儀なくさせられ、ユーロも使用できなくなる。EUからの経済支援金も授与もなくなる。この様な状態になれば、外国企業にとってカタルーニャに投資する魅力はなくなる。  実際にカタルーニャで独立の動き始まってから、カタルーニャを去る企業が増えている。特に、オフィスや工場の移転よりもスペインにおける本社の登記をカタルーニャ以外の自治州に移す動きが盛んになっている。今年第2四半期だけでも1186社がカタルーニャから登記上において本社を他の自治州に移しているという統計も出ている。この結果、カタルーニャ州の法人税は減収となる。(参照:「OK diario」)  更に、カタルーニャ企業の販売の半分近くはスペインの他の地方に依存しているのである。しかし、独立すればカタルーニャ製品のボイコットの対象となる。実際にカタルーニャの特産であるカバのスペイン国内での年末の売上が減少するという現象が起きている。(参照:「Expansion」)  カタルーニャが独立すれば、GDPは20%-30%は減少するというのは専門家の共通した見方である。更に、中央政府からの借入金は524億9900万ユーロ(6兆8200億円)あり、カタルーニャ州民で年金受給者への年金の給与も滞ることになるのは必至である。  さらに、カタルーニャ州の住民は、独立派が大半だったというわけでもない。今年7月22日のカタルーニャ州政府管轄の意見調査センター(CEO)が発表した内容によると、<州民の49.4%が独立反対、41.1%が独立賛成>という調査結果になっているのである。2016年7月に賛成支持が反対支持を上回った時があったが、2014年12月から2017年6月まで独立反対が常に独立賛成を上回っていたのである。  この様に、ほぼ同数かあるいは反対派州民が多かったにも関わらず、実際に起こりうる経済事情を州民に説明せずに単に独立を煽るカタルーニャの政治指導者は犯罪的ですらある。
次のページ
残された大きな「傷」
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会