カタルーニャ独立問題住民投票終了。混乱の後に残された「分断」の深さ

白石和幸

AFP=時事

 10月1日、ついにカタルーニャ州で独立を問う住民投票が行われた。しかし、この住民投票が違憲と見做されていることの充分な説明が日本では報道されていないように思える。

 というのも、スペイン憲法155条に「国家の統一を損なう自治州の政治活動は禁止されており、それを実施すれば中央政府はその自治州の機能を停止できる」という内容の規定が謳われている。この規定内容に基づいて、スペイン政府はカタルーニャ州政府が実施しようとしている住民投票は違憲だと見做したわけである。

 そして、スペイン憲法裁判所も同様に違憲だという判決を下した。

 違憲であるにも拘らずカタルーニャ州政府はそれを実施しようとしたという背景があった。

ラホイ首相の「失策」

 カタルーニャ州が独立の必要性を訴えて来たのは、同州が財政難にあったという背景がある。つまり、同州は、スペインのGDPに20%も貢献しているにもかかわらず、その貢献で得た富がスペインの他の自治州に付与されていて、カタルーニャ州にはそれに見合うだけの富の分配が中央政府から付与されていないという不満が常に渦巻いていたのだ。

 そして独立支持派はカタルーニャの人口と経済規模において、人口はスイス、州面積はベルギー、GDPはノルウェーにそれぞれ匹敵するとして、独立国家として成り立って行けると判断しているのである。(参照:「Cinco Dias」)

 このため、マス前州知事の時から中央政府のラホイ首相にカタルーニャの特異性について説明し、財政面でもより独立性を持たせる行政にするように要求していた。それが受け入れられない場合は住民投票も辞さないという構えであった。

 それが2014年9月に実施された住民投票であった。このときは、カタルーニャ州の有権者数540万人の内の225万人が投票に参加した。結果は80%が独立支持票であったが、独立反対派はこの投票は合法ではないとして投票を拒否したのだった。(参照:「El Pais」)

 その時のマス知事は違憲とされた住民投票を実施し、その為に公金横領したとして法廷で有罪の判決が下されて公的職務に就くことが出来なくなっている。そして、現在その罰金として214万ユーロ(2億7800万円)が科せられている。(参照:「El Economista」)

 ただ、ここで注意を要するのは、155条には住民投票そのものをしてはいけないという言及はないのである。それが故に、カタルーニャ州政府サイドも強引に実施を試みたといえる。

 もし、ラホイ首相が政治交渉の上手い器用な政治家であれば、そこでマス前州知事そしてプッチェモン州知事と何らかの政治的合意を見つけ出すことも可能であったはずだ。しかし、ラホイ首相はただただ住民投票は違法だから認められないという拒絶反応を示しただけであった。

 住民投票を実施しないという公約の元であれば、カタルーニャの財政見直しにも協力するという構えを見せていたのである。住民投票の中止と財政見直しを同時に交渉台に乗せていれば今日起きている混乱も回避できた可能性はある。その意味で、ラホイ首相の国家指導者としての不器用さが、今回の混乱した住民投票を招いたのである。

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強硬な対決姿勢

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