北朝鮮のICBMエンジンはウクライナ製? その真偽を検証する

鳥嶋真也
ロシアに展示されているD-250

ロシアの宇宙企業エネルゴマーシュの展示室にあるRD-250 Image Credit: NPO Energomash

なぜロシアより、ウクライナが濃厚?

 仮にRD-250が北朝鮮に流れたとして、いつ、誰が、どういう経路で流したのかについて、エレマン氏やニューヨーク・タイムズの報道は、ウクライナとロシアの両方の名前を挙げつつも、どちらかというとウクライナが疑わしいとしている。  ソ連時代、R-36の本体の開発と生産、RD-250エンジンの開発、そしてエンジンの生産は、それぞれ別の設計局(企業)によって行われていた。それを現在の国や企業に当てはめると、ミサイル本体の開発と生産は、現在のウクライナにある「ユージュノエ」という企業に、エンジンの開発はロシアの「エネルゴマーシュ」に、そしてエンジンの生産はウクライナの「ユージュマシュ」になる。ちなみにユージュノエとユージュマシュは、別の企業ではあるものの密接な協力関係にあり、とくにミサイルや宇宙開発においては両輪のように働いている。  R-36の製造はソ連時代にすでに終わっているものの、メンテナンスなどのために一部の部品の生産ラインや、予備の部品、あるいは技術のノウハウなどは残されていたと考えられる。したがって、RD-250を”生産”をしていた現ウクライナのユージュノエやユージュマシュからエンジンの技術、もしくはエンジンそのものが北朝鮮に流れたと考えるのは筋が通っている。  さらにElleman氏は、ある専門家から、ユージュノエの工場の近くにある大学で、RD-250を半分にした、つまり火星12型や14型に装着されているものに似たエンジンが展示されているのを見たという証言を得ており、さらに地元のエンジニアが「それは自分が造った」と言っているのを聞いたという証言も得ていると書いている。  またエレマン氏は、RD-250が北朝鮮に流れた時期を、ここ最近の数年以内と見ている。ユージュノエやユージュマシュはロシア向けにロケットの生産も行っており、大口の顧客でもあったが、2014年にウクライナ危機が起こり両国の関係が悪化したことでその契約を失い、財政難に陥っていたとみられている。そのため、RD-250を北朝鮮に”輸出”することで食いつないでいた、と考えるのは一理ある。  くわえて、ウクライナ危機が起きた2014年以降に輸出されたと考えるなら、北朝鮮がここ数年で急速にミサイル技術を伸ばしていることの説明もつく。  ただし、直接的な証拠は何もないことに注意すべきである。報告書をまとめたエレマン氏も、「あくまでユージュノエやユージュマシュは犯人の候補のひとつであり、ロシア側にも疑わしいところがある」としている。また仮にユージュノエやユージュマシュが関与していたとしても、それは会社ぐるみ、あるいはウクライナ政府ぐるみのことではないだろうともしている。
次のページ 
ウクライナは反論
1
2
3
4
関連記事