北朝鮮のICBMエンジンはウクライナ製? その真偽を検証する

鳥嶋真也
火星14型

朝鮮中央テレビが7月4日に放送した大陸間弾道ミサイル「火星14型」の写真 Image Credit: KCTV

 英国のシンクタンク「国際戦略研究所」(IISS)のマイケル・エレマン(Michael Elleman)氏は8月14日、近年、驚異的な進展をみせている北朝鮮のミサイル技術について、「ウクライナ、もしくはロシアから高性能ロケットエンジンを手に入れたためではないか」という内容の報告書を発表した。

 これに続き、ニューヨーク・タイムズ紙は「北朝鮮のミサイルの成功は、ウクライナ、ロシアの関与が疑われる」とする記事を掲載。さらにそれを引用する形で、日本のメディアも報じている。

 はたしてこの説はどこまで正しいのだろうか。そしてウクライナとロシアのどちらから流れたのだろうか。エレマン氏の報告書と、ウクライナとロシア双方の主張、そして歴史的な事実などから検証してみたい。

なぜウクライナやロシアの関与が疑われているのか?

 IISSがウクライナやロシアの関与を指摘した背景には、今年5月に発射された中距離弾道ミサイル「火星12型」と、7月に2度発射された大陸間弾道ミサイル「火星14型」のエンジンが、ソ連で開発された「RD-250」という名前のエンジンにそっくりだということがある。

 RD-250は1960年代に、ソ連のロケット開発の大家であるヴァレンティーン・グルシュコーによって開発されたエンジンで、R-36という大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジンとして使われた(現在ではすでに全機が退役している)。R-36は複数の核弾頭を搭載できる大型のICBMで、1段目にRD-250を3基装着している。

 RD-250は2基の燃焼器で1つのエンジンとして機能する、一見すると2つのエンジンがくっついたような形をしている。火星12型、14型は、このRD-250を半分にカットして燃焼器を1基にし、性能も半分にした上で装着しているとみられている。

 火星12型や14型のエンジンがRD-250に似ているということは、昨年9月にエンジンの地上燃焼試験の写真が公開されたときから、何人かの専門家が指摘していた。とくに、エンジンのターボ・ポンプと呼ばれる部品が、RD-250や同じ時期にグルシュコーが開発したエンジンの特徴と一致していることが大きな論拠となっていた(詳しくはHBO『脅威増す北朝鮮のロケット技術――「新型ロケット・エンジン」の実力を読み解く』を参照)。

⇒【写真】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=149474

北朝鮮公開の新型エンジン燃焼実験

2016年9月に行われた、「新型エンジン」と称するエンジンの燃焼試験の様子。ソ連のRD-250エンジンをもとに開発され、のちに火星12型、14型に搭載されたとみられる Image Credit: KCTV

 一口にロケットエンジンといっても、その姿かたちは千差万別で、偶然一致するということはない。とくにRD-250などは他にはない特徴的な形状をしており、その特徴と北朝鮮のエンジンが一致しているということは、何らかの形でロシアやウクライナから北朝鮮に、RD-250などの技術が流れたことはほぼ疑いようがなかった。

 また、オリジナルのRD-250は約80トンの推力を出せるが、火星12型、14型のエンジンの推力はともに40トンほどと推定されており、「性能を半分にした」という見解とも一致する。さらにエンジンを半分にするような改造にはいくらかの技術が必要であり、当の開発者であるロシアかウクライナの支援があったとするのは筋が通っている。

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なぜ「ウクライナ」が濃厚なのか?

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