ただし、今回の研究結果は、あくまで水が大量に存在している可能性を示しているだけであり、本当に水が大量にあるかどうかを断言することはできない(当然、研究チームも断言していない)。そのため今後、さらに詳細な観測や探査が待たれる。
さらに科学的には、もし水があったとしても、それがどのようにして月にもたらされたのか、という謎も残っている。
また、月探査や移住における水の利用という観点から見ると、仮に水があったとしても、それが簡単に取り出せるのか、そして利用できるのかという問題がある。
アポロで回収された月の石のガラス粒子には、水はわずか0.05%しか含まれていない。もちろん、このガラス粒子を含んだ火山性堆積物は大量にあるため、水の全体量はとても多いと考えられるが、それを利用するためには、地面を掘って、ガラス粒子を大量にかき集め、そこから水を取り出して……という大きな手間が必要になるだろう。そのための装置や機械を造ったり、それらを打ち上げたりするコストもかかる。少なくとも地球のように、川や海から水をすくって利用する、というようなことはできない。
しかし、どのような形であれ、少なくとも地球から持ち込むよりは楽ではあることは間違いない。月に大量の水が眠っているかもしれないということは、明日、明後日の人類を変えるものではないかもしれないが、月への旅行や移住といった、10年後、100年後の未来を考えたときに、その実現を後押しする、大きな後ろ盾になるかもしれない。
米国の企業アストロボティックが開発している月探査機の想像図 Image Credit: Astrobotic
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『
イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・Scientists spy new evidence of water in the Moon’s interior | News from Brown(
https://news.brown.edu/articles/2017/07/moonwater)
・Brown-Led Team Finds Evidence of Water in Moon’s Interior | News from Brown(
https://news.brown.edu/articles/2008/07/moon08)
・Scientists detect Earth-equivalent amount of water in the moon | News from Brown(
https://news.brown.edu/articles/2011/05/moonwater)
・Astrobotic and United Launch Alliance Announce Mission to the Moon | Astrobotic(
https://www.astrobotic.com/2017/7/26/astrobotic-and-united-launch-alliance-announce-mission-to-the-moon)
・Moon Express releases details of its lunar lander missions – SpaceNews.com(
http://spacenews.com/moon-express-releases-details-of-its-lunar-lander-missions/)