米国、大陸間弾道ミサイルの迎撃試験に初めて成功。米国本土を守る迎撃ミサイルの実力

標的であるICBMに向けて発射された、「グラウンド・ベースド・ミッドコース・ディフェンス」の迎撃ミサイル Image Credit: MDA

 米国防総省のミサイル防衛局(MDA)は5月30日、米国本土に向けて発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)を、迎撃ミサイルで撃ち落とすことを想定した試験に成功した。

 米国はすでに、弾道ミサイルを迎撃できるミサイルを何種類も開発して配備し、試験も行われている。

 しかし、今回試験された「グラウンド・ベースド・ミッドコース・ディフェンス」、通称「GMD」と呼ばれる迎撃システムは、これまで迎撃試験に何度も失敗しており、さらにICBMの迎撃を想定した試験は今回が初めてでもあったことから、関係者らにとっては大いなる福音となった。

 今回は、このGMDの概要や仕組み、必要性などについてみていきたい。

「弾丸を弾丸で墜とす」迎撃ミサイル

 最初に、弾道弾迎撃ミサイルについて簡単に触れておきたい。

 弾道弾迎撃ミサイルは、敵から発射された弾道ミサイルを、飛行中にこちらから発射したミサイルをぶち当てて、破壊することを目的としている。

 その特徴からよく「弾丸を弾丸で墜とすようなもの」と言われることもある。実際には相手のミサイルもこちらのミサイルも軌道を変えることができるため、発射したら最後、まっすぐにしか飛ばない弾丸をたとえにもちだすのは、必ずしも正確とはいえない。しかし、ミサイルにミサイルを当てて墜とすことの難しさをざっくり伝えるのには十分といえよう。

 迎撃ミサイルにはいくつかの種類があるが、おおまかに「敵のミサイルを、どのタイミングで迎撃するか」によって大別される。

 この敵のミサイルが飛行しているタイミングには、3つの種類がある。

 まず敵から発射された弾道ミサイルは、ロケット・エンジンやモーターで勢いよく、斜め上に向かって上昇する。この間のことを「ブースト・フェイズ」という。

 ロケットの燃焼はものの数分で終わるものの、その後もミサイルは慣性で上昇を続け、やがて宇宙空間に到達。核爆弾などを積んだ弾頭部分が分離され、そのままホームランのボールのように放物線を描いて落下を始める。この間のことを「ミッドコース・フェイズ」という。

 そしてミサイルの弾頭部分は大気圏に再突入し、目標に向かって突っ込んでくる。この間のことを「ターミナル・フェイズ」という。

 このうち、海上自衛隊や米海軍の艦艇に搭載されている「SM-3」というミサイルはミッドコース・フェイズで、たびたび市ヶ谷の防衛省などに展開されてニュースになる「PAC-3」や、韓国への配備をめぐって問題となっている「THAAD」(サード)といったミサイルは、ターミナル・フェイズでの迎撃を担う。ちなみにブースト・フェイズでの迎撃ができるシステムは、今のところはまだない。

 また、それぞれの迎撃ミサイルは、弾道ミサイルを探知、追跡するレーダーなどの地上設備と一体となってシステムを組んでおり、さらに宇宙空間には、弾道ミサイルの発射を探知する早期警戒衛星も配備されている。

 迎撃ミサイルは決して100%確実に撃ち落とせるというわけではなく、またミサイルが複数発射されたり、特殊な飛び方で発射された場合には対応できないシステムも出てくるため、異なるシステムを複数用意し、さらに他のシステム同士とも連携を取ることで、迎撃の可能性をできる限り高めている。

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=141892

米国の弾道ミサイル防衛の概要 Image Credit: MDA

 また、ここで例に出したのは米国や日本を中心としたシステムだが、ロシアや中国なども、規模の大小はあれ、似たようなシステムを独自に配備している。

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