清水富美加(千眼美子)の出家は宗教依存ではなかった!?

アイデンティティ確立の過程と新興宗教の深い関わり

 しかしなぜ今回の騒動の中に家族が現れなかったのだろうか。疑問の答と考えられるのは二つ。依存し甘えられる家族環境が既に失われていたか、或いは家族自体が既に「幸福の科学」に含まれていて宗教と家族が同一視されていたか。生い立ちや生育歴の中にヒントがありそうではあるが、これ以上はプライバシーの問題でもあり、予想は控える。 【②-1、2、3】、ここには青年、清水富美加としてのアイデンティティの確立過程が表れている。 結論から言えば、今回の出家は、世間が考えるような「新興宗教に洗脳された。早く解放してあげたほうが幸せだ。まだ若いから芸能界で再起できる」といった単純な流れには到底なりえない。その可能性は極めて低い。 理由は二つ。 ①数年来の心的葛藤を解決して選択、決断したと言う事実があり、その元には信仰心の存在がある。 ②自分が人の役に立てることがあり、それは仕事でではなく宗教活動においてだと知ったから。

誰もが青年期にアイデンティティを確立できるわけではない

 青年期の発達課題で有名な心理学者のエリク・H・エリクソンとマーシャ・リネハンは、アイデンティティとは自分は何者か、何をする者かを体得することで、人間の生涯発達で最も重要な意味を持ち、それは青年期に起こるが、誰もが達成できるわけではないと明かしている。  アイデンティティの達成は、主に就職、恋愛や結婚、友人関係やライバルとの競争などを通して作られるとしているが、新聞各紙でもわかるように彼女にとって、仕事はアイデンティティ達成の最大の障害であったようだ。  若者の中にはアイデンティティに失敗するものも多い。自分探しがいつまでも終わらなかったり、間違った自分(反社会的な存在)を選んでしまう者がそれだ。また親の言いなりや、言われるがままの進路を選ぶ者もアイデンティティは弱い。  一方で、理想的で揺らぎの無いアイデンティティを確立する者もいる。共通するのは、苦しく辛いほどの精神的葛藤や悩み、生活での困難を、自力でまたは周囲の支えを得て乗り越えた経験を持つことである。彼らの人格はしなやかでアイデンティティ達成の自信も大きい。
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アドラー心理学でいう「勇気」が見て取れる?
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