この演習を実施する前にと、必ずといっていいほど出される意見が、「会議の冒頭で洗い上げなどを行ってしまったら、それこそ紛糾する。寝た子を起こさない方がよい」というものだ。実は、その意見は、全くの杞憂だ。この4つの質問を、普通に素直に繰り出して行けば、決して紛糾しないのだ。演習を実施して初めて、参加者は、目からウロコの実感を持っていただく。
どういうことかというと、会議が紛糾してしまうのは、「洗い上げ質問」するからではなく、
「洗い上げ質問」により出された懸念や異論に対して、意見が出される度に応酬してしまうからなのだ。参加者が懸念を表明する、すると、方針説明をした人が「いや、そうではありません、こういうことです」とさらに反論する。参加者が異論を挙げる、すると、会議進行役が「説明が足りなかったかもしれません、こういう考え方です」……というように、いちいち応酬するから、紛糾するのだ。
4つの質問のスキルを繰り出す際は、「洗い出し質問」「掘り下げ質問」「示唆質問」「まとめの質問」の順に、素直にそのまま、その質問を繰り出してって、決して応酬しないことさえ気に留めておけば、誰でも合意形成のためのファシリテーションを実現できるのだ。
世の中に山ほど会議進行の解説本がある。大手書店に行けば、5段組の棚全体が会議進行の書籍で埋まっている。解説本を読まなくても、4つの質問のスキルの繰り出し方を身につければ、合意形成を実現する担い手に間違いなくなれる。私は、この4つの質問のスキルを含む、分解スキル・反復演習型能力開発プログラムが、生産性向上、ひいては働き方改革の鍵であると確信している。
※「質問による合意形成のスキル」は、山口博著『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月。ビジネス書ランキング:2016年12月丸善名古屋本店1位、紀伊國屋書店大手町ビル店1位、丸善丸の内本店3位、2017年1月八重洲ブックセンター4位)で、セルフトレーニングできます。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第26回】
<文/山口博>
【山口 博(やまぐち・ひろし)】株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある
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