演説は、分断したアメリカを再びまとめる意識などなかった
洗練された用語を使っているかどうかはさておき、テキストで読むとアメリカ第一主義を起点に、それなりのことを言っている印象を持ちます。しかし、ライブ中継では盛り上がりに欠け、妙な違和感があった。いったいなぜなのか。
おそらくトランプ大統領は、分断したアメリカを再びまとめようという意識を初めから持っていなかったからだと思います。
例えば
「あななたちの声に、誰もが耳を傾けている」
という発言。声に耳を傾けているという意味では、演説最後の方で言った、
「あなたたちが無視されることは二度とない」
とも重なります。セリフとしてはいいのですが、トランプ氏がこれを言うのはどうなのか。
これをトランプ氏に対して嫌悪感を抱いている人が聞いたらどうでしょうか。これだけ人権などについて無視した発言をしておきながら、何を言ってるんだ、と考える人が大半でしょう。
無視されることがないならば、トランプ大統領への抗議の声をきちんと聞いてほしい、と考えた人もいるかもしれません。この文言は、演説に違和感をもたらした一例だと著者は考えますが、このような積み重ねが演説全体をぎこちないものにした感があります。
さらに、政治家の間でも不満を募らせた方もいることでしょう。特に、上記に挙げた、
「ワシントンから国民に権力を返還する」
という発言。別の言い方をすれば、これまでの政治を非難する発言です。これまでやってきたことを否定されたと感じた政治家もいたはず。今後政権運営で他の政治家から協力を仰がないといけないはずなのに、敵に回しかねない実に際どい発言ともいえます。