それは、まず、経営者だけでなく「
働く側全員」が自分の働き方をよく考えることです。現場の社員の多くは、自らの働き方を良くしたいと思っています。しかし、一時的に火の粉を払いたいだけの経営者がいるのも事実です。
残念なことに社員の方でも、「残業代が欲しい」「早くに帰宅しづらい」といった、見えない成果よりもやる気の表現としてオフィス長期滞在希望の人もおり、経営者同士、社員同士でも食い違いがあります。そのような状況では形の上で制度を作っても、結局は人の心が変わらなければ、本当に有意義なものとして実行されません。働く人たちの希望する働き方を知った上で、会社側もニーズに応じた複数の選択肢を提供できればいいでしょう。
武神健之氏
そして、どちらの働き方も尊重される企業文化(社風)があると、働く人は安心して自由意志で働き方を決められるのではないでしょうか。
はじめからスローライフスタイルを選択することでやる気がないと人格が否定されないこと、または、ガンガンスタイルからスロースタイルに変更しても“負けた”と捉えない雰囲気(社風)の形成が大切でしょう。両者を認める企業文化を育み、社員が数年ごとに選べるといいと考えます。
このような制度がない会社は、自社にあった制度の検討を開始すべきですし、すでにそのような制度を持っている会社であれば、さらに制度の幅を広げることも検討をしていただき、働き方の多様化に対応することが、今後は重要になってくると思います。
<TEXT/武神健之>
【武神健之】
たけがみ けんじ◯医学博士、産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『
不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『
産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある