クリスマスから年始に偶発するテロ事件 欧州極右化にかかわらず、シェンゲン協定を見直す時が来ている

極右化しなくても、シェンゲン協定の見直しは進む可能性がある

 そしてシェンゲン協定のもっとも大きなデメリットは、言うまでもなく難民や不法移民が国境検査を受けずに流入してきてしまうという点です。また、テロが容易にシェンゲン圏の他国へ移動できてしまうといったことも問題視されており、これは安全保障上の懸念として大きなテーマにもなっています。今回のアムリ容疑者のケースがこれにあたります。アムリ容疑者はまずイタリアへと入国。その後、シェンゲン圏を移動してきました。  今回の事件は、シェンゲン協定というものの意味を再度考えるきっかけとなります。極右政党がこれを機に、意見を強めるきっかけにもなるでしょう。テロ事件が起こったドイツでは既に難民問題が大きな問題になっていることもあり、ドイツのための選択肢(AfD)という極右政党の存在感が徐々に増しています。大統領選を控えているフランスでは、極右政党である国民戦線のルペン党首が、今回の事件を機にさらに主張を強めていくことでしょう。  たとえ極右政党が大躍進することがないにせよ、今後、テロ対策という名のもと、国境管理は厳しくなる方向へ向かうと考えられます。結局、今、再度シェンゲン協定の意味が問われている時期に来ていると言っていいでしょう。 <文・岡本泰輔> 【岡本泰輔】 マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。
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