タイ国民に広く愛された国王崩御。現地記者が見た街の様子

 外国メディアが懸念していた新国王の問題も崩御された日の深夜にはワチラロンコーン皇太子が即位することが決まったようだ。王位継承者がほかにもいたために、極端な意見では王位を争って内戦が勃発するという見方もあったが、来年10月に予定されているプーミポンアドゥンヤデート国王の葬儀ののちに皇太子が即位する予定になり、現状は非常に落ち着いた状況になっている。  また、外国メディアの中にはタイ経済が冷え込むという見方もある。逆にタイ国内では大きな影響はないという意見が多いように見受けられる。元々タイの公務員は個人個人で法解釈をしていることから、例えばなんらかの申請などにおいて担当官によって必要書類が変わってくることがある。懸念されるのは、このように統一されていない対応が、喪に服しているという理由からより悪化することで、実際に喪に服すこの1年間は景気悪化の要素はある。

華やかなものが控えられている状態であることから、バンコクの高架鉄道BTS車内のTVではCM放送は打ち切られ、哀悼の意を表した画面が流れている

 しかし、それもほんの一部、あるいは外国からの投資に影響がある程度で、内需は変わらないのではないかと見られてもいる。タイ政府が一般市民に喪に服すことを強要しておらず、1ヶ月間だけ派手なイベントを控えれば、以降は通常通りに戻る見込みが高い。つまり、年末商戦などには国王崩御の影響がかなり小さくなるはずだ。  タイ人は心の奥底では自身の父親を失った以上の悲しみに打ちひしがれているが、日々の糧を得るための経済活動はまったく別の問題であり、政府も国民もそれとこれは切り離して考えているようである。そのため、タイはあくまでも13日以前と同じ毎日があり、外国人がタイ旅行を控える理由は今のところどこにも見当たらない。
崩御翌日

崩御翌日も経済活動はいつも通りで、渋滞も見られた

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会