ラオスで影響力を拡大する中国系企業 国営の携帯電話事業者を買収

ラオスの携帯電話業界に激震

 そんな中、2016年9月にラオスの携帯電話業界に大きな動きが起きた。  中国の京信通信系統控股は、香港特別行政区の迦福控股がラオスの携帯電話事業者であるETLを買収することを正式に発表したのだ。  京信通信系統控股によると迦福控股とラオス政府の間で、迦福控股がETLの株式51%を9,180万米ドルで取得することで合意したという。なお、迦福控股は京信通信系統控股の関連会社であり、京信通信系統控股が迦福控股の株式49%を保有する。京信通信系統控股は迦福控股がETLの株式を取得するために、5,000万米ドルを拠出することを明らかにしており、京信通信系統控股は積極的にETLの事業に参画する方針だという。  ETLはラオスの国営企業であり、ラオス政府がETLの株式100%を保有しているが、迦福控股との取引完了後は49%に減少することになる。

純国営の通信会社が消滅

ETL本社敷地内にある基地局

 ラオスの携帯電話事業者はStar Telecom、Lao Telecommunications(LTC)、VimpelCom Lao、そしてETLの4社である。  Star TelecomにはLao Asia Telecom(LAT)が51%、ベトナムのViettel Global Investmentが49%の比率で出資している。Lao Asia Telecomはラオス政府が所有する企業で、Viettel Global Investmentはベトナム国防省が所有するViettel Groupの国際事業を管轄する企業であり、実質的にラオス政府とViettel Groupの共同出資となる。LTCにはラオス政府が51%、タイを拠点とするThaicomの子会社でシンガポールのShenington Investmentsが49%の比率で出資している。VimpelCom LaoにはオランダのVimpelComが78%、ラオス政府が22%の比率で出資している。  このようにETL以外はすべて外国企業の資本が入っており、計画通りに取引が完了すれば全社とも外国企業が資本参加することになる。中国がラオスで影響力を拡大する中で、それはラオスの携帯電話業界にも波及し、もはや社会インフラとも言える携帯電話事業にも中国資本が進出する。
次のページ
ETLが「身売り」した理由
1
2
3
4
5
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会