さらに、アリオに出店するテナントのうち、セブンアイ系列外の大型テナントはファミリーファッションの「ユニクロ」やシューズの「ABC-MART」など、デフレ化にも強いいわゆるファストファッションで占められることが多い。イオンモールが得意とする純郊外地域では、こういったファストファッションの大型店の出店余地がまだまだある一方、アリオが得意とする大都市圏(特に首都圏)では、景況感が改善しつつあるうえにアパレルの選択肢も多いため、ファストファッションの大型店で床を埋めるという従来のショッピングセンターの経営手法が成り立たなくなってきているという現実もある。
2016年4月に開業した際新店舗の「セブンパークアリオ柏」(柏市)。外装タイルや窓の多くがフェイク(イラスト)という姿が「イトーヨーカドーらしくない」と話題を呼んだが、これも出店コスト削減のためか
これまで「デフレマインド」による収益改善が見込めない百貨店、総合スーパーに対し、デフレ下でも収益を上げてきたとされるショッピングセンター「アリオ」。
しかしこれまで示したように、アリオはデフレ状態でないと新規出店・収益化が難しい業態であり、大都市圏がデフレから脱却しつつあるなかで、結果的に出店を凍結せざるを得ない状態にまで至ってしまったと言える。
消費者のデフレマインドが深刻だと言われる昨今。しかし、本当に深刻なのは、ショッピングセンター運営にも苦慮するほどにまで追い込まれた「セブンアンドアイホールディングス自体のデフレマインド」ではなかろうか。
<取材・文・撮影/都市商業研究所>
【都市商業研究所】
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