ダム放流が5月半ばから増えたのは「農業用水のため」?
これに対し、国交省関東地方整備局河川環境課の斎藤充則・建設専門官は「そんなことはありません」と反論する。
「ただ単に、河口から30トンが流れ出ればいいというわけではありません。ダムから下流までまんべんなく行き渡らせようとして、結果的に80トンになっているということです。その過程が要らないというわけではない。今年は冬期の雪が少なかったので一生懸命ダムの水を貯めて、4月20日に上流の5ダムを満水にしました。ダムの放流量が5月半ばから増えたのは農業用水のためなんです。毎日、(農水省)関東農政局と連絡し合って、農業用水の一つひとつの堰の開け閉めを決めています」
しかし、関東農政局の農村振興課水理計画官に聞くと「水を多く使う田んぼの『代掻き』が利根川水系の地域で始まるのは、早ければ千葉県で4月中旬。一番多いのが、4月末から始まるゴールデンウィーク。遅ければ麦との二毛作をする群馬県で7月」だという。
ということは、5月半ばからの急減が「農業用水のため」という国交省の説明は、必ずしも当てはまらないのではないか? さらに「7月からの洪水調節期に備えてダムの水位を下げ始めるのは、通常6月後半から」(嶋津氏)なのだという。