利根川は本当に「渇水」しているのか?

 国土交通省と1都5県(千葉、茨城、栃木、群馬、埼玉)は6月16日、利根川水系ダムからの10%の取水制限を始めたと発表した。そして、貯水率が11%となって水位の下がった矢木沢ダム(群馬県)を公開し、テレビや新聞は一斉に「利根川渇水」を報道している。

国交省による「水収支」の計算が間違っている!?

八ッ場ダムサイトで進む掘削工事(6月11日、写真提供/八ッ場あしたの会)

 しかし、そんな報道を横目に「(渇水報道は)ダムの必要性をアピールするためのもの」と見ているのが、高度成長期に東京都職員として工場の節水対策に成果を上げ、退職後も住民訴訟で「八ッ場ダムは不要だ」と証言を行ってきた嶋津暉之氏だ。 「利根川水系ダムは国土交通省が決めたルールで放流が行われていますが、そのルールそのものが過剰な放流を促しています」(嶋津氏)  上流で雨雪を集めて形づくられた川は、農業用水や都市用水のための取水と、支流からの流入を繰り返して、最終的には海へと流れ出る。利根川水系では、国交省がその「水収支」を計算し、上流の8ダムからの放流量を決める。例えば、4~9月は中流の栗橋地点(埼玉県)で毎秒120トンが流れるようにする。この120トンは、鬼怒川など支流からの流入量も計算に入れ、最下流の利根川河口堰(千葉県)で毎秒30トンが流れるように、逆算で定めたものだ。  しかし、嶋津氏が利根川水系の8ダムの貯水量が急減した5月の河口堰放流量を調べてみると、毎秒平均80トン程度が海へ流れ出ていたという。 「50トンも余分に流れているのは、つまり逆算が間違っているということ。これは鬼怒川など支川からの流入量を過小評価し、農業用水や都市用水の取水量が過大評価されているためだと思われます」(嶋津氏)
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ダム放流が5月半ばから増えた理由
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