なにがそんなに驚きだったのか。
特に驚いたのは、パクチーサラダだった。葉から茎まで、どっさりとパクチーが盛られているではないか。
渋谷「ガイトーン・プラトゥーナーム」のパクチーサラダ。これはこれでタイに逆輸入したら人気が出そうな気もする
もちろん、本場でもカオマンガイに付くスープにパクチーが一葉二葉程度が入れられるが、日本では小さなカップにたくさんのパクチーが無料でもらえる。そのパクチーを、日本のOLさんたちが、これでもかとばかりにたっぷりとカオマンガイに載せて食べていた。ビタミンが豊富なので美容にもよく、人気になる理由はわかるが、本場のタイ人が見たらびっくりするような食べ方である。聞けば、日本は空前のパクチーブームだそうで、タイ在住15年の筆者にとってはある意味斬新な印象を受けたのである。
パクチーはセリ科の一年草で、その名はタイ語である。以前はコリアンダー、中華料理では香菜(シャンツァイ)と呼ばれていたが、近年のタイ料理を始めとしたエスニック料理の台頭でパクチーという呼び方が日本全国で通じるようになった。日本にも鎖国以前にポルトガルから入ってきていたそうで、平安時代に編まれた辞書「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」にも記載されているという。
しかし、ここまでブームになったのはここ最近のことだろう。
このブームにおいてパクチーはサラダにされたり、スープや炒めものに入れられている。
しかし、これはあくまで日本のブームの中での食べ方だ。
本場タイではつけ合わせ程度の使われ方しかしない。基本的には火は通さず、トムヤムクンスープやヤム(タイ風のサラダ各種の総称)などに最後にちょこんと入れるくらいでしかない。
カオマンガイを食べるにしても、渋谷の「ガイトーン・プラトゥーナーム」のランチタイムのOLさんのように、まるで「パクチーを食べる」ことが目的のような食べ方は見られない。パクチーはあくまでも脇役の中の脇役なのだ。
カオマンガイのスープに浮かぶパクチーの葉。タイではこのように少量しか使わない
さらに、パクチー以外でも「カオマンガイ」へのスタンスもタイ人との差異があった。