帝京ロンドン学園サッカー部顧問に訊く、高校生がイギリスでサッカーを学ぶ意味

天然芝ピッチ2面、ナイター設備完備

――卒業後は、どう言った進路を選ぶ生徒が多いのでしょうか。  帰国して日本の大学に進学する生徒が多いですが、サッカーコースからイギリスの大学に進学する生徒もいます。もちろん、プロ選手を目指す生徒もおり、昨年度まで在籍していた世川楓悟という生徒は、在学中にスペインの育成機関と契約を果たし、卒業後サッカー選手としてのキャリアをスタートしました。彼は入学時にはそこまで目立った生徒ではありませんでしたが、3年間の指導で爆発的に伸び、提携しているサッカー代理人の後押しもあって契約に至りました。本校はイギリス人プロ選手を何人も輩出しているアカデミーとも提携しており、彼は部活動だけではなくそこでも結果を残し、三年生の夏にはイングランド5部のプロクラブの練習にも参加していました。

高校時代の世川楓悟選手

――施設も拝見しましたが、クラブのユースチームでもこれだけ揃えているチームは少ないと思います。  天然芝のピッチが2面、それにナイター照明も完備しています。フィジカルトレーニング用のジムや器具はもちろん、コンディション管理のためにジャグジー、温水プール、サウナ、水風呂なども設置していますが、施設のモデルケースにしているのはイングランドプレミアリーグの下部組織なので、これでもまだまだ足りないところだらけです。今年度からは、試合や練習後のケアのために、プールを使ったセッションやメンタルトレーニングも開始しました。施設の運用方法も、もっと改善していきたいですね。 ――それに見合う成果も出ていますね。2014年にはイギリスの州大会(日本における県大会)で優勝しました。  自分が顧問に就任する以前の試合で、その時は現在セレッソ大阪の強化部に勤務している方が顧問でしたが、こういう結果が出たことは学園としても嬉しかったですね。試合はイギリスだけではなく、欧州各地や日本にも遠征して行うことがあるんですが、日本での試合で興味深い出来事がありました。自分達のちょっとしたプレー1つ1つにファウルの笛が吹かれて、試合がスムーズに進行しなかったんですね。試合後には、相手チームの監督さんからも少しクレームが来てしまいました。こちらとしてはイギリスの大会と同じ、普段通りのプレーをしただけだったんですが、日本とイギリスではジャッジの基準が違うことからこういうことが起きてしまいました。しかし、客観的に見てヨーロッパのリーグやW杯のような国際試合は、イギリスの基準に近いと感じています。設備ももちろんセールスポイントですが、それよりも国際基準の下で高校3年間の競技人生を過ごすことができる、それこそが本校最大の強みですし、イギリスの大会で結果を残せている理由だと考えています。 ――これだけの設備ですから学費もやはりかかるのでしょうか。  正直に申し上げて、学費は高いです。1ポンド157円(6月1日現在)で計算しますと、現在サッカーコースは一年で約350万円いただいています。ただし、寮制なのでこれらは学費、部費、食費、寮費など、生活に必要なお金を全て合わせた費用です。文科省が行っている就学支援金制度など、活用可能な奨学金制度の紹介も行っておりますし、7月16日と8月27日に日本の帝京大学板橋キャンパスで説明会も行いますので、もし興味を持たれたら費用にためらわずにまずは問い合わせていただければと思います。多くの選手も輩出しましたが、今後は審判や代理人、運営などあらゆる形で日本サッカーに貢献できる、国際的なサッカー人を育成していきたいですね。

クールダウン用のジャグジー、サウナもスチームサウナとドライサウナの二種類に分かれている

 選手でなくとも、トレーナー志望やサッカー関連ビジネスなど、サッカーに関わる広範なことを本場で学べるのは大きなメリットだろう。日本のサッカーが今後世界の列強に伍していくためにも、こうした学校の存在は大きな鍵になるのかもしれない。 <取材・文/HBO取材班 写真/帝京ロンドン学園>
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