熊本地震で早期復旧できた商業施設、鍵は「海上物流」

「営業再開が復興への近道」と奮起する小売業

物流の確保は復興への第一歩である。営業を再開しても売場に商品が並ばない店舗もあった

 かつての大震災の際、ある大手スーパーは店舗の営業再開が復興への近道だとして、採算度外視の輸送体制を採ることでいち早く営業を再開、住民に生活必需品を格安で販売した。  また、九州のある大手スーパーは、台風災害が起きるたびに採算度外視で離島店舗の物流を確保し、営業を続けることで島民の信頼を得ていた。  これは、当時は「小売業者に余裕があった時代」だからこそ行えたとも言えるかも知れない。現に、この2社はともに2000年代に入り経営破綻を起こしている。  しかし、こうしてかつての大手流通企業が遺した「災害時の対応マニュアル」は、現在の大手流通企業やコンビニエンスストアへと受け継がれている。  小売業は決して公共事業ではない。しかし、大型店や商店街は大きな社会インフラであり、地域社会を形づくる、欠かせない大きな要素の1つである。  全国各地で災害が頻発する日本だからこそ、こういった災害時に、地域社会に対してどのような対応ができるか、また、災害に強い店舗づくりができるか、そして、災害時に被災者に頼りにされ「営業再開を待ち望まれるような店づくり」を行うことができるかということは、今後の小売企業や商店街の発展の鍵にもなるであろう。

鶴屋百貨店東館・テトリア1階にある「くまモンスクエア」は5月10日より営業再開。多くの市民に元気を与えている。

(取材日:4月23日~5月14日) <取材・文・写真/都市商業研究所> 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」 ※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中 ・銀座ソニービル、2017年3月閉館-2022年の建替え目指す日本橋三越本店、重要文化財に-開店343年、築102年国立代々木競技場、長期閉鎖へ-耐震工事で
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