熊本地震の発生から約2ヶ月が経過した。地域によって差はあるものの、復興は着実に進んでおり、被災地でも徐々に日常生活を取り戻しつつある。ピーク時には熊本県で約18万人、大分県で約2万人を数えた避難者も、ライフラインの復旧や自宅の修復、転居などによって、5月中旬には両県合わせて約1万人を切る数にまで減少した。
熊本地震の本震が発生した直後の4月17日、政府が被災地に90万食を無償提供するとともに、それに加えて70万食を物流確保・店頭配送することを発表した際、「全てを避難所への無償支援物資とすべきだ」との批判の声があがった。
しかし、被災地の全員が「避難者」だった訳ではない。被災地の住民の大半は避難所ではなく、自宅や親族の家などで不安な日々を過ごしていた。
これらの人々が普段通りの生活に戻るためには、避難所に物資を届けるだけでは不十分なことは明白だ。
地震が起きた直後から復興は始まっている。いつもの行きつけの店舗や商店街が営業を再開し、生活に必要なものを買い揃えることができるようになるということは、「日常」を取り戻すためへの第一歩でもある。
ライフラインが復旧しない家も多いなか、多大な努力により物流が確保できた店舗は、被災者のために格安で生活必需品を販売した。
そして、街の顔であり、長期休業していた百貨店やファッションビルが復活した時には、早朝から多くの客が並んだ。
被災地の誰もが、自由に買い物するという「日常を取り戻したい」と思っているのである。
そして、被災者に「日常を取り戻させてあげたい」と願いつつ、同じく被災者である自らも「日常を取り戻したい」と願ったのは、大型店やコンビニエンスストア、商店街などの商店主や従業員も同様であった。