食品添加物や排ガスには有害基準値があるのにタバコはゼロしか認めない?
とはいえ、世界的な流れとしてはプレーンパッケージ導入に傾いているのは確かだ。財務省としても税収減に繋がる表示に賛成のわけはないが、世間を鑑みて表立って反対できないという面もある。今年3月から財政制度審議会のたばこ事業等分科会表示等部会において、警告表示の改訂に向けて検討を始めたという。
「ただ、画像付き警告も一定の効果はあるかもしれませんが、限定的だと思います。表示されるようなことは、喫煙者も承知して吸ってるわけですから」(山森氏)
後半、全国初の受動喫煙防止条例を制定した、元神奈川県知事の松沢成文参院議員が「喫煙者と非喫煙者の共存はあり得ない!」と締めくくったこのイベントは、東京オリンピック開催までに全面禁煙しか許さない『受動喫煙防止法』制定推進などが決議されて幕を閉じた。
「なんで分煙じゃダメなんでしょうかね。大前提として、現時点でタバコは合法的な嗜好品であって、人はそれを楽しむ権利があるわけです。しかも、大半の喫煙者は所構わず吸いたいと言ってるわけでもありません。むしろ、すでに喫煙できる場所がほとんどない。タバコ税の一割でも目的税化すれば、高性能な喫煙所をいくつも作れる。少しはタバコ納税者に還元してほしいくらいです」(山森氏)
また、イベントで講演をしていた受動喫煙を巡る訴訟に詳しい弁護士は、喫煙者の衣服についたタバコ粒子、さらには喫煙者の呼気までも受動喫煙防止に絡めて問題視していたが、そこまでいくと健康に関する話なのか、好き嫌いの話なのか、論点が見えなくなってくる。その点について、山森氏は厚労省の姿勢を疑問視する。
「厚労省及び禁煙推進派が掲げる健康被害の科学的根拠は、タバコ以外のファクターを考慮しない疫学的なものばかりです。もちろん、疫学にも意味はありますが、それが全てではない。どれ位の空間でどれだけの煙があると、どれだけのリスクがあるのか。定量データを突き付けられれば、喫煙者だって他者を傷つける意志はないんだから納得しますよ。にもかかわらず、厚労省は一切基準を示そうとしない。以前、厚労省の担当者に取材した際、例えばドーム球場の一塁側スタンドでタバコを吸ったとして、三塁側にいる人も受動喫煙になるのかと尋ねると『そうです』と答えた。でも、そんな非現実的な話ありますか」(山森氏)
厚労省は食品添加物や薬に含まれる有害物質に基準値を設けて、それを下回れば認可している。先に出た排ガス、あるいは放射線量にしても、国は基準値を定めている。
何故、タバコだけが「ゼロ以外は認めない」という話になってしまうのか。プレーンパッケージ導入もいいが、受動喫煙防止の議論を深めるためにも、まずこの点について、厚労省は説明する責任があるのではないか。<取材・文/杉山大樹>