アルゼンチンに続きブラジルも米国の傘の中に。テメル大統領代行が始動

親米路線に舵を切ったテメル大統領代行

 テメル大統領代行は、民主運動党(PMDB)の党首だ。PMDBは中道政権ではあるものの、いわゆる包括政党であり、中道右派新自由主義政権時代も、労働党政権時代でも政権与党として留まり続けている政党だ。  しかしながら、テメル大統領代行は、どちらかといえば親米かつ新自由主義的な方向に舵を切るものと見られている。というのも、左派政権だったルセフ政権の社会政策の柱になっていた貧困者への救済金「ボルサ•デ•ファミリア」について、現在〈4600万人を対象に支給されているのを1000万人まで削減する〉方針を打ち出して、歳出削減をしようとしている。(PajaroRojo)  また、外交関係も米国の陣営での関係づくりを強化すべきだとしている。同氏のメルコスール(南部南米共同市場)やBRICSへの関心は全く低い。むしろ、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の方に関心を寄せている。この方針を貫くためにテメル大統領代行はブラジル議会で強力政党である社会民主党(PSDB)も与党に加えて、外相のポストを同党のホセ・セッラ氏に渡した。同氏は偶然にも2002年にルラ氏と大統領選挙を争った相手である。  すなわち、テメル政権が今後歩もうとしている方向は正にアルゼンチンのマクリ政権と同じ欧米寄りの方向なのである。ルラ前大統領とルセフ大統領の労働者党の政権では、中国とロシアを軸にした経済と外交であったのと真逆の方向である。
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ルセフ罷免で噂される米国の影
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