新制度の対象となるのは、国内で働く勤続3年以上の正社員1500人。希望者は副業の内容を人事部に申請する。審査に通れば、晴れて会社公認の兼業がスタートできる。ただし、時間帯は土日祝及び終業後限定。また、副業の申請手続きと平行して、上司とも面談を重ねる。いくら会社からお墨付きをもらえても、現場の理解を得られなければ両立は難しいからだ。
「現時点の応募数は数十名です。“興味はあるけど、ひとまず様子を見よう”という社員も多いのではないでしょうか。今後、実際に兼業をスタートした人を目にすれば、働き方のイメージもつきやすくなり、自然と希望者も増えていくと考えています」(ロート製薬広報・CSV推進室)
兼業・副業は企業と個人、双方にとって福音になりうる。企業からすれば、社員が“第二の仕事”で得てきた知見やスキル、人脈が役立つ。さらに、業務効率を上げ、定時帰宅する社員が増えれば、残業代の節約にもなる。働く側としても、複数の収入源を確保しておけば、万が一のリストラや失業の備えも万全だ。
ただし、ここでの兼業・副業はあくまでも<本業に差し支えない範囲>に留めるのが前提となる。例えば、過去の裁判例を見ると、建設会社の社員が勤務時間外にキャバレーで働き解雇されたケースや、タクシー運転手がガス器具の販売業を手がけたことがきっかけで懲戒免職になった事例もある。また、競合する企業での兼業・副業は解雇処分が妥当だという判決が下ることが多い。
今後、いくら兼業・副業にまつわる規制緩和が進んでも、突然“何でもアリ”になるとは考えにくい。兼業・副業に励むあまり、本業を失っては元も子もない。何はともあれ、本業に打ち込み、周囲の信頼を得る。それこそが、将来の自由とカネへの布石になるのだ。
<取材・文/
島影真奈美>
<プロフィール>
しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『
オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『
定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『
レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。