あの煽りパワポで話題のレスラーが語る「プレゼンの極意」

準備に照れるな!「再現性の高さ」こそ最大の武器

 しかし、「煽りパワポ」が生まれた最大の理由は、ほかにあるという。プロレスラーなのに、マイクパフォーマンスが大の苦手だったのだ。 「口下手でアドリブも利かないので、対戦相手にもお客さんにも『お前が戦いたい理由がよくわからない』と言われ続けていて。長州力にしろ、藤波辰爾にしろ、リング上でとっさの感情にまかせて飛び出した言葉から、これまでも数々の名言が生まれていますよね……えーと、まあ、今も例がパッと思い浮かばないんですけど(笑)。でも、プロや名人であるほど、アドリブのように見えてちゃんと経験の蓄積という『準備』をしているわけです。だったら、準備することに照れなくてもいいし、準備してきたことを隠す必要もないと思うんですよ」 「準備に照れるな」とは、けだし名言だ。アドリブの利かないコミュ障ならなおのこと、前もって入念に準備しておくことを「カッコ悪い」と恐れてはいけないのだ。 「それに、今はコンプライアンスの厳しい時代。うっかり相手の身体的特徴などをdisってクレームがついたら、放送取りやめになってしまいますからね。だったら、パワポで事前に資料をまとめ、なるべく挑発的な言葉を使わずに理路整然と、データやグラフなどを使って相手の体力を削っていくほうがいいんですよ」

ササダンゴ氏のパワポ芸は経営理論の絶好の教材!

 一見、「ネタ」的に見えるササダンゴ氏のパワーポイント煽りだが、実は、経営理論やマーケティングに使われる多様な「フレームワーク」が駆使されている。 ・ササダンゴ氏の用いるフレームワークその1:「SWOT分析」  今回発売したDVDの中で、雑誌『週刊プロレス』の発行部数を伸ばす方法を編集部にプレゼンしに行くチャプターがある。ここで用いられているのは、内部環境の強みと弱み、外部環境の機会と脅威を書き出す「SWOT分析」を使っている。『週刊プロレス』を「Strength(強み)」、「Weaknesses(弱み)」、「Opportunities(機会)」、「Threats(脅威)」の4つの要素で分析し、戦略を導き出しているのだ。 ・ササダンゴ氏の用いるフレームワークその2:「アンゾフのマトリクス」  上カルビ(塩)の次に何を注文すべきかという、一見日常生活の1シーンのようなわかりやすいチャプターを通じて使われているのは「アンゾフのマトリクス」。これは既存市場と新規市場、既存製品と新規製品のマトリクスに分類して企業の取りうる成長戦略の位置づけを行うことだ。  漠然とした理解だけしかなかったこれらのフレームワークも、ササダンゴ氏の見事なプレゼンを見ると難解な本を読むよりすんなりと頭に入ってくるはずだ。 「実際、経済産業省が主管している中小機構という、中小企業の研修施設のようなところで、経営理論やマーケティングを学んでいましたからね。その後、新潟大学大学院の技術経営研究科という、製造業やものづくりの仕事をしている人に特化した専門大学院にも入りました。僕、そこに入るのもプレゼンの試験で受かったんです(笑)」
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プロレスラーならではの見せ方から学ぶ
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スーパー・ササダンゴ・マシンによるコミュ障サラリーマンのためのプレゼン講座

スーパー・ササダンゴ・マシンのノウハウが遂に明らかに!