安全処は地震防災対策改善推進チームを結成し、7月中に民間建築物の補強対策を打ち出すとしているが、仮に今、韓国で大地震が起きた場合どのような事態が想定されるのか?
2011年、東日本大震災直後も韓国では国内の耐震基準や原発の安全性について議論が高まったが、当時の専門家たちによるとソウル中心部で震度6.5の地震が発生した場合の被害は日本の100倍と分析しており、死亡者が7000人以上、負傷者は10万人以上と試算されている。(参照:
アジア経済)
現在までにも状況はあまり変わらず、国内では未だ不安が残っている。
さらに韓国内での地震対策訓練は5月に実施される三日間の防災訓練である「安全韓国訓練」における一日のみ。非常時における消防防災庁と軍、警察、病院の連携についてのガイドラインも存在しない。
日本と同程度の震災が起きた場合、日本をはるかに凌ぐ被害が拡大する可能性があるのだ。
一方、政府機関の建物は比較的堅牢で、耐震設計導入以前の1970年に建てられた世宗路政府庁舎は、震度5~6程度までは耐えられるという調査結果が出ている。大田、済州、光州の政府庁舎も同様だった。
とはいえ韓国の専門家は、熊本地震の余波により5年以内にM5の地震が発生する可能性は高いが、それ以上の地震が韓国で起きる可能性は極めて低いと見ている。
ただ自然現象は予測ができないため、既存建造物への徹底的な点検を怠ってはいけないとも警告している。(参照:
ハンギョレ新聞)
むしろ懸念すべきは「人災」であるという声も多い。特に原発関連ではこれまでに幾度も不祥事が起きている。
原発および関連施設、火力・水力発電所等の耐震設計率は100%であるが、2013年には品質安全基準テスト結果が偽造された部品が納品されていたことが明るみになり、隠ぺいには韓国の公営原子力機関である韓国電力公社までもが加担していた事件があった。その上、つねに北朝鮮の核の脅威にさらされており、有事の際は原発に着火し連鎖爆発も起こりうる。
「東日本大震災の後、韓国でも耐震や原発の安全性について見直そうという空気が高まりました。地震や津波の危険性が日本に比べたら少ないとはいえ、最も恐れるべきことは管理の不行き届きが蓄積されることによって、少しの事故や災害の対応に必要以上の混乱と脆弱性を発揮する点。時限爆弾を抱えているようなものです」(ソウル市民)
韓国内では「我が国も中国や日本より安全とはいえない」と危機意識が高まっているようだ。
<文/HBO取材班>