ハイテク装具のスポーツ大会「サイバスロン」開催を日本のハイテク産業はどう見たか?

 動力付き人工膝、着脱可能な人工腕、強化外骨格……。SFの話ではない。こうした最新のテクノロジーを搭載した高度な義肢や装具を着用した障がい者によるスポーツ大会「Cybathlon(サイバスロン)が2016年スイスで開催されることになった。アスリート自身の運動能力はもちろん、企業や研究所が先端技術を集結させたどんな義肢装具を投入してくるのか、期待が高まっている。競技種目は、強化外骨格や電気刺激装置を用いた陸上競技、脳波を使ってコンピュータ上のアバターを操るレースなどがあり、パラリンピックと趣を異にしている。  近未来的な響きの種目名で注目を集めているが、各種目に関連する技術を開発している企業・研究所は、同大会についてどのように見ているのだろうか?

サイバスロンのPVにも登場した佐川電子のパワードジャケット

パワードジャケットMK3

佐川電子「パワードジャケットMK3」

 士郎正宗原作『アップルシード』に登場する強化外骨格「ギュゲス」を再現した展示で話題となった佐川電子の「パワードジャケットMK3」。世界初の搭乗型パワードスーツ市販モデルとして、Youtubeにアップされたプロモーション映像は、海外からも注目を集めた。また、サイバスロンのプロモーション映像にも写っており、その動向が気になるところだ。  現在、同社は「MK3」の後継機として、膝関節のモーターアシストなどを搭載した「MK4」を開発中。サイバスロンでは、脊髄を損傷した人がパワードスーツを装着し競歩を行なう「電動外骨格レース」という種目が用意されており、同社取締役CTOの町浩輔氏は参加に意欲をみせている。 「サイバスロンの映像に、MK3の動画が勝手に使われていてビックリしました。もともとこういう大会をやりたいと思っていたので、機会があれば出てみたいです。現在、MK4は人が乗って安定するどころじゃないのが現状で、人間の動きと機械の動きを合わせるために、センサーのセッティングを調整しています。モーターは一定の回転を保つのは得意なのですが、人間の筋肉のように、収縮と伸長を連続するのが苦手なんです。そこをいかに解決するかが課題です」

ニューロスカイ「necomimi」

 サイバスロンには、脳波を読み取るセンサーを頭部に装着し、脳波だけを使ってコンピュータレースを行う種目がある。脳波を読取り、人間の感情や状態をネコ耳の動きによって視覚化する「necomimi」の技術は、この種目との相性はどうなのだろうか?「necomimi」を開発したニューロスカイの営業部長・小山氏に話を聞いた。 「アメリカでは弊社のセンサーを使い、集中度によってボールの高さを変える『マインドフレックス』というおもちゃが100万セットを超えるヒットを記録しています」(小山氏。以下同)  日本ではそこまでのヒットをしなかったそうだが、かわりにnecomimiが想像以上の大ヒットとなった。 「ニューロスカイは、脳波などの生体信号データを活用するためのセンサーモジュールを開発しており、エンターテイメント製品を開発する企業をはじめ、さまざまなパートナーに提供しています。おもしろおかしく使ってもらうマーケットを狙って販売していますが、necomimiの販売を通して、脳波を使ったコミュニケーションは、障がい者の方にも貢献できる技術なんだと実感しました」  同社CEOは、脳波を使ったゲームが知り合いの障がい児と親とのコミュにケーションに役立つ場面に立ち会ったそうだ。necomimiではないが、意思表示が困難な子どもが、脳波センサーを装着し、『あなたはお母さんを愛してる?』という質問に対して、ぐーっと集中してYES側にメーターを振り切ったという。  同社のセンサーは、脳波から人の感情や状態を読み取るアルゴリズムがメインとなっており、「参加意義はぱっとは思い浮かびません」というが、ニューロスカイの技術を活用したいと思うパートナー次第では、サイバスロンにも関わってくるのかもしれない。  「サイバスロン2016」はスイスで開催される予定。約2年間という期間の間にも、技術は着実に進化し続けていく。開催までどんな技術が登場するのか。テクノロジーが人を幸福にするために使われる。技術者にとっても、やりがいがある課題なのかもしれない。 <取材・文/林健太>
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