サウジアラムコのIPOが成功すれば、日銭を稼ぐために、原油を増産し、価格維持政策ばかりに注力する必要が少なくなるだろう。国の財政にも余裕が生まれる。
2015年のサウジアラビアのGDPは約6320億ドルで、東京都よりやや小さい経済規模である。同年の一人当たりGDPは約2万ドル。石油などの天然資源の採掘と輸出により外貨を獲得し、それを政府系投資ファンドとして、世界各国で投資運用しているのは既に記した通りである。
現時点、サウジアラビアでは、石油関連以外の業種は育っていない。製造業は小規模なものに留まり、巡礼者や業務渡航以外の一般観光客を受け入れていないことから、観光業も育っていない。このため、政府主導でITなどを中心とした経済多角化を進めているものの、成果は目立ったものは無く、依然として石油依存経済であることに変わりはない。
サウジアラビアの人口は3200万人で、増加し続けている。失業率は15%程度とみられている。
サウジアラムコのIPOにより得られた資金を使って、新たな収益につながる投資をおこなうことは、サウジアラビアの失業率の改善にもつながると期待されている。
果たして、このサウジアラムコのIPO、筋書き通りに行けば起死回生の一発逆転策になるかもしれないが、いまだ抱えている問題は少なくない。今後の行方を注視したい。
<文/丹羽 唯一朗>