老夫婦が暮らした山口県岩国市の里山(映画『ふたりの桃源郷』より) (C)山口放送
里山で水や燃料、食料を自給し、苦労もあるが伸びやかに暮らす。「里山資本主義」そのままの生活を夫妻は営んでいた。しかし作品は単なる「里山礼賛」とは一線を画する。
「生活の根本に農があったのは確かです。けれども夫妻はそれを我々に押しつけることはなく、気負わずに生きていました」と佐々木さん。編集でも「農」をどこまで描くかについては葛藤があったそうだ。
「都市で暮らしていても、心の持ちようで田中さん夫妻のようにゆったりと生きている人はいるのではないか、とも思います。震災後、『つながり』や『支えあい』が注目されていますが、それらは生きていくための手段であって、目的ではありません。心がなければ支え合うこともできないのです」(同)
夫妻が暮らした山奥は集落から離れ、入植当時は半ば村八分的な扱いだったという。それでも家族のために田畑を耕し、自然の恵みを得て暮らした。
「夫婦の暮らしを通じて、家族の故郷が生まれた。故郷は作るもの、ということも言えるのではないでしょうか」(同)
作品は5月14日に東京・東中野の
「ポレポレ東中野」、6月11日に山口県内6館で公開。以後、全国で順次公開予定だ。
<取材・文・撮影/斉藤円華>