「被災者無視」で進む原発事故復興行政に批判の声が相次ぐ

「年間20ミリシーベルトを下回った」と言われても若者は帰ってこない

「南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟」原告代表で南相馬市に住む菅野秀一さん

 福島県内に住み続ける人も悩みは深い。3月28日に東京地裁で開かれた「南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟」の第三回口頭弁論。その報告集会で、原告代表の菅野秀一さんは次のように訴えた。 「放射線量が年間20ミリシーベルトを下回ったとして特定避難勧奨地点が解除された。しかし今も(年間)6ミリとか10ミリとか、高い所はたくさんあるので若者は帰ってこない。75歳以上の限界集落になってしまった」  県内住民らで取り組む「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト」は2014年夏、南相馬市内の旧特定避難勧奨地点とその周辺で空間線量を調査。それによると、東西75m・南北100mのブロックごとに空間線量を調べたところ、片倉ほか5つの行政区で年間1ミリシーベルトを上回る箇所がほとんどだった。しかも、その過半数で放射線管理区域の設定基準である0.6マイクロシーベルト時を超えていた。  つまり年間20ミリシーベルトを下回ったとはいえ、放射線管理区域並みの線量がある場所も残っているのだ。地域への帰還を若者たちがためらう現状は無論、大型の店舗や医療施設がないこと、避難先での生活が定着していることなども影響している。菅野さんは「私がいる行政区に子どもたちが一人もいないのは本当にさみしい」と話した。  復興を急ぐあまり、避難者や被災者の声を無視して、強引に施策が進められてはいないだろうか。戻りたくても戻れない人々の声を、行政はもっと聴くべきではないだろうか。<取材・文・撮影/斉藤円華>
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