羽咋市がJAと協力、自然栽培による“安全な食”の販路拡大で東京進出

「量より質を重視」して市とJAが連携

自慢の自然栽培米を手にする金増店長は「これから就農希望者の相談にも力を入れます」と意欲的だ

 こうして自然栽培への理解と機運が高まるなか、TPP後をにらんだ「攻めの農業」を推進する市は、切り札として自然栽培による街づくりに大きく舵を切った。昨年、全国で初めて農林水産課に「自然栽培推進係」を新設、新規就農者への農地斡旋や住宅支援などに積極的に乗り出した。さらにJAと連携を強化。今年1月、全小中学校の給食に自然栽培の食材を使う試みを共同で行った。 「自然栽培は、市とJAはくいがタイアップして力を入れている事業。農業といえば、生産量が重視されていましたが、最近は量より質が重視されています。自然栽培は安全性を追求しており、質の面でトップに立てると考えています」  給食の試食を前に、山辺芳宣(やまべよしのぶ)市長は自信を持ってこうあいさつ。JAの山本好和常務も自然栽培に力を入れるメリットを子どもたちに次のように語りかけた。 「自然栽培は肥料と農薬などを使わないため、その分の費用がかかりません。そのため、地元農家の所得増につながると考えています」

安全な食の生産は「雇用を生み、人を呼ぶ」

 3月中旬、市は満を持して首都圏へ進出した。  乳母車に子供を乗せた夫婦、子供を負ぶった女性が店に入ってきてクッキーを買っていった。店内は自然栽培の小麦粉で作ったクッキー、リンゴと能登の自然塩などを使ったマフィンなど焼き菓子も充実している。値段も手ごろで、かわいらしい形が子供心をくすぐり人気だという。  まだまだ認知度の低い自然栽培の農産物と加工品をどこまで広めることができるか。購買者が増え、安全な食の生産地がさらに勢いづけば、「雇用を生み、人を呼ぶ」。はくい放送局のこれからの活動から目が離せない。 【能登みらい農業はくい放送局】東京都杉並区方南2-4-28(東京メトロ丸ノ内線・方南町駅徒歩5分)営業時間:10時~19時(月曜休み)電話:03-6383-2333 文・写真/田中裕司(ノンフィクションライター。著書に『希望のイチゴ~最難関の無農薬・無肥料栽培に挑む~』など)
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希望のイチゴ

難題に挑む農家・野中慎吾の、試行錯誤の日々を描く