通信が途絶えた天文衛星「ひとみ」。原因不明の高速回転状態にあると判明

「ひとみ」は通常では考えられない速さで回転か

東京大学・木曽観測所が観測した「ひとみ」と考えられる物体(41337)の明るさの変化。このデータから、「ひとみ」が約5.2秒で1回転していることが推測されている Photo by JAXA/東京大学

 この41337の軌道は正確にわかっており、何時何分に地球のどこの上空を飛ぶかもわかる。そこでJAXAは、研究機関や大学、天文台などに依頼し、望遠鏡やレーダーによる観測が行われた。前述の41337が「ひとみ」本体であるという推定に至ったのも、そうした観測が行われた結果である。  そのうち、東京大学・木曽観測所などの観測によって、「ひとみ」本体は、約5.2秒に1回転していると推定されている。詳しい回転の状態は不明なものの、非常に速い速度で回転していることはほぼ間違いないという。  衛星が回転していることについて、JAXAでは姿勢制御系に異常が起きたのではと見ている。  姿勢制御系というのは、衛星の姿勢を制御するシステムのことで、たとえば衛星内部でコマを回し、その反動で機体を回転させる「リアクション・ホイール」や、ガスを噴射して衛星を動かす「スラスター」、そしてそれら装置に指令を出すコンピューターとソフトウェア、さらに今現在の自身の姿勢を知るための各種センサーなどが含まれる。  現時点では、データがないため、これらのうちどこに異常が起きたのかはわかっていない。  さらに、「ひとみ」が約5.2秒に1回転という速さで回転することは通常では考えられない。たとえばリアクション・ホイールは、衛星をゆっくりとしか回転させることができないため、これほどの高速回転になることはない。バッテリーやヘリウム・タンクが破裂してその反動で回転を始めた可能性も、それだけのエネルギーは出ないという。  スラスターを噴射したと考えれば高速回転の説明はつくものの、基本的には地上からの指示がないと噴射しないようになっている。JAXAでは原因について、あらゆる可能性を考えているとしている。  原因はともかくとして、「ひとみ」が高速回転すると、その構造上、強度的に弱い太陽電池の一部や、衛星の後ろに伸びている「伸展ベンチ」と呼ばれる部分が千切れ、分離する可能性が考えられるという。  つまり、まず姿勢制御系に何らかの異常が発生して衛星が回転をはじめ、その回転が何らかの理由で高速になり10個もの破片が発生、さらに通信もできなくなった、という流れが考えられるが、これは結論ではなく、JAXAでは引き続きあらゆる可能性を探っていくとしている。
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通信回復も原因究明も長期戦に
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