「都の事業なので何も言えない」としてきた市の姿勢に変化が
都心近郊でありながら貴重な自然が残る「はけ」一帯(「はけの自然と文化をまもる会」フェイスブックより)
一方、住民の中には都道を望む声もある。連雀通りは以前から歩道の狭さや渋滞が懸案となってきた。また、3・4・11号線周辺では、生活道路がクルマの抜け道となっている現状の解決を都道整備に託す住民もいるという。
安田さんらは3・4・11号線周辺の住民を交えて意見交換会を行った。「道路ははけを切り通して作られる可能性が高く、そうなると近所の風景ががらりと変わります。道路を望んでいても、そのことを知って戸惑う人もいます」(安田さん)。
今回、2本の都道案は、交通の円滑化や防災などの機能を重視して「優先整備路線」に選ばれた経緯がある。ところが肝心の住民は、一連の計画策定の過程には全くといっていいほど参加できていない。市も「都の事業であり、市が関与できる立場にない」との姿勢を取っている。住民の頭ごなしに都道計画案が示された形だ。
第四次事業化計画案について都が実施したパブリックコメントでは、総数4126件のうち2041件が小金井市の2路線について反対や見直しを求める意見だった。
また、会は小金井市議会に4500筆の賛同署名を添えて「都道計画案の変更・見直しを求める陳情書」を提出した。
こうした中、西岡真一郎市長は3月15日の市議会で「市としては早期の事業着手ではなく、環境や景観に配慮していきたい」と答弁。陳情書も3月28日、市議会本会議で賛成多数により可決された。「都道計画案はあくまで都の事業」だとしてきた市の立場が、ここに来て変化の兆しを見せている。一方、都は3月30日に小金井市の2路線を計画決定した。
<取材・文・撮影/斉藤円華>