「イラク戦争の検証をせずに、日本の針路は決められない」戦場ジャーナリストらが提言

「日の丸」が「盾」から「標的」に

空爆でケガをして病院に運び込まれた子ども(撮影:志葉玲)

 自衛隊が駐留したサマワを取材していた綿井氏は、現地の人々の日本に対する態度の変化を感じるようになる。 「彼らは、日本は街を復興させ、仕事をつくってくれるものだと思っていました。しかし、自衛隊は宿営地にこもりっきり。派遣費用のほとんどがその運営と航空自衛隊輸送機による“米軍の運搬”などに消えてしまい、サマワの人たちにはほとんど還元されませんでした。そのため対日感情が一気に悪化し、サマワの日本友好協会会長が経営する店が襲われる事態にまで発展したのです」  現地支援NGOのJIM-NET事務局長、佐藤真紀氏も同様の危機感を指摘した。 「サマワの自衛隊は、いたるところに日の丸マークをつけていました。米軍との一体感を避けるためでしょう。自衛隊が駐留していたサマワを警護していたのがイギリス軍とオランダ軍だったのも運が良かった。しかし、復興支援に役立たないことがバレてしまいました。今後は日の丸が逆効果になるかもしれません」  これまで築き上げてきた「ニッポン・ブランド」は、イラク戦争で崩れ去った。しかし日本の中にいると、そういった国際関係や対日感情の悪化にはどうしても疎くなってしまう。 「英BBCや米CNN、中東のアルジャジーラなどのニュースは、スマホでもチェックできます。英語が分からなくても、日本では決して流れない映像が見れます。ぜひ外国報道もチェックしてほしい」とイラク支援ボランティアの高遠菜穂子さんは訴えた。
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当時の英首相や米大統領も誤りを認めているが、日本は認めず
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丸腰国家―軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略―

「理想」ではなく「現実」のもとに軍隊をなくした人々。