都会の専門家が考える「復興」と、被災地の人が願う「復興」の大きな差とは?

住民の自助努力に頼りすぎの移転事業

高台

現在、移転先の高台では住宅建設が進んでいる

 浦島地区の住民たちは協議会を組織して、防集の実行にとりかかった。津波で散り散りになった住民の所在探しから始め、住民の希望を集約した。 「『どこに移転するか』も大きな課題でした。移転先の地権者も先祖代々受け継いできた土地を手放すことに抵抗を感じないはずはありません。土地提供の協力を得るためには、移転を希望する住民と土地を提供する住民との間の信頼関係と、慎重かつ丁寧なやりとりが求められました。実際に移転地が見つからず、防集ができなくなった地域もあります」  浦島地区はなんとか移転先を確保したが、少なすぎる「生活再建支援金」や、老齢世代の多い住民には住宅ローンが重くのしかかり、施工業者の手も足りない。JVCは住民からのSOSを受ける形で、専門家のアドバイザーを派遣し、協議会に協力した。防集が始まってから4年、現在は住宅の再建が進み、事業が完了しつつあるという。 「浦島地区では住民の強い結束、JVCなど支援者のサポートなどがあって防集を成功させることができましたが、被災した住民にとってあまりにハードルが高かったという印象を拭えません。移転先の選定や地権者交渉、そして住宅の再建に至るまで、この事業が住民の自助努力に頼りすぎているのではないかと思います。都会の専門家が考える復興と、地域の人たちが願う復興には大きな差があるのです」  3月27日(日)、JVCは築地本願寺で活動報告会「コミュニティの分断と再生~住民と共に悩み歩んだ5年間~ 」を開催予定。岩田さんも登壇予定。ゲストに東北を取材し続けるフォト・ジャーナリストの安田菜津紀さんが司会を務める。詳細はJVCのHPを参照。http://www.ngo-jvc.net/jp/event/event2016/03/20160327-event.html <文/白川愚童>
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