ネットを活用することで、外だけでなく国内の潜在需要を発掘する「たんす屋」だが、インバウンド需要に関しては、今後は旅館や旅行業界との提携を考えているという。キーワードは「モノからコトへ」だ。
「着物はただ売るだけのものではなく、文化体験です。外国のお客様からは特に、日本の文化を体験したいという需要があります。そういう意味で近い将来、外国からのお客様が旅館で着付け体験をするサービスを検討しています。店舗ではなく、旅館にデリバリーする形でサービスを提供できれば、設備費が浮くだけでなく、旅館の女将という着付け指導のプロがいるので人員削減につながります。旅館側にもメリットがある。というのも、旅館側は着物の着付けをきっかけに宿泊客とコミュニケーションが取れ、リピーター獲得の機会をつくりやすいからです。これは外国人観光客に限らず、観光客全般が対象になると思っています」
中国人観光客による「バク買い」で注目を集めたインバウンド需要は、じきに下火になるとの見方もあるが、“モノ”を買い求める「バク買い」と違い、「たんす屋」では文化体験という“コト”を提供している。たとえインバウンド需要が減ったとしても、文化体験を求めてやってくる人の数には直接的な影響はない。むしろ、体験者の口コミが広がれば、需要は今後も増えていくことだろう。
<取材・文/上原純(OfficeTi) 撮影/林紘輝(扶桑社)>