自律的に学習を重ねていくことで、コンピューターは人間の関与がなくても、どんどん進化していくことが可能になった。
常識推論が可能になったことで、AIは起こりうる可能性を無限に計算を続けなければならないという『フレーム問題』の呪縛から開放され、臨機応変に判断をしていくことができるようになった。
この先、AIとロボット工学とセンサー技術が統合されれば、AIはいよいよコンピューターの箱から抜け出し、あなたの隣の席に腰を下ろすかもしれない。
それは、各国の言語のニュアンスやあなたの口癖や性格を踏まえた、あなた専用の通訳ロボットかもしれない。あるいは、あなた好みの曲を作るあなた専用の作曲家や演奏家かもしれない。また、あるいは、あなたの体質や精神状態を熟知したあなた専用の医者なのかもしれない。その医者は、病気の診断も薬の処方も手術も、あなたのバイタルサインを24時間検知し、あなたを見守り、適切な処置を施してくれるに違いない。
身体を備えたAI、もしくはAIを備えたロボットは、人間よりも遥かに器用に仕事をこなすようになるだろう。
そう遠くない未来、三つ星のフレンチレストランには、もう人間のシェフはいなくなるかもしれない。寿司や天ぷら、懐石料理店などの板場にも、人間はいなくなるかもしれない。農園や牧場、漁港、工場にも働く人の姿がなくなるかもしれないし、芸術家や小説家、歌人、職人の世界からも、人間は姿を消しているかもしれない。
2015年12月に、
興味深いレポートが公開された。野村総研とオックスフォード大学の共同研究としてまとめられたそのレポートは、10~20年後、日本の労働人口の49%は人工知能やロボット等に置き換えることができると報告されている。
ネガティブに表現すれば、この先10年から20年の間に、日本人の半分はAIやロボットに仕事を奪われ、失職する可能性があるということだ。
また、「創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担う」とも言われている。しかしそれは“10~20年の間は”という限定付きの話で、20~30年の間には、すべての職業が人間の手から消えているかもしれない。
最後に、少し、妄想してみよう。あらゆる職業をAIやロボットが行ない、人間の出る幕がなくなるということは、人間が食べたり飲んだり眠ったり着飾ったり遊んだりするために必要なあらゆるものを、AIやロボットが調達してくれるということ。
まんざら悪いことでもなさそうだ。
しかし、楽チンになった人間は、一体、何をするのだろうか?
そんな世界で、わたしたちは、いま以上に笑って暮らしているのだろうか?
あなたは、どう思いますか?
<文/廣瀬 周>
ひろせあまね●出版/制作会社に長年勤務し、情報通信および医療分野での文章執筆業務に携わる。