在職時代のルラ前大統領。photo by Ricardo Stuckert/PR・Agência Brasil(CC BY 3.0 BR)
新国立競技場の新しい案に聖火台がないことが発覚し右往左往するなど、相変わらずドタバタが終わらない2020年東京オリンピックだが、その4年前の開催となるリオデジャネイロ五輪が開催されるブラジルは、経済状態は最悪でジカ熱は大流行、さらには政界の汚職事件で前大統領に捜査当局の手が回るというドタバタどころではない事態に陥っている。
今回、捜査当局の手が及んだのは、前大統領であるルラ前大統領。現在ブラジル全土を震憾させている国営石油会社ペトロブラスの汚職事件に絡む事情聴取のため、3時間にわたって拘束されたのだ。
2003年から2010年までブラジルの大統領だったルラ氏はもともとマルクス主義者だ。彼は大統領になる為に大統領選に3度挑戦している。貧困層から立ち上がった人物で大統領になってから貧困層を支援する対策を積極的に進め、「貧困の父」とも称された。最初に大統領に当選した時は61%の支持率を獲得した。彼の政権下では年間GDP平均4%の継続した成長を遂げた。一時は国民からの支持率は87%にまで達した。この時期にブラジルは世界から注目を集めた。そしてルラは2014年のワールドカップと2016年のオリンピックのブラジルでの召致に成功した。
また、彼の左派的政治思想は当時のラテンアメリカの左派政権に多大の影響を与えた。ベネズエラのチャベス前大統領、ウルグアイのムヒカ前大統領、ボリビアのモラレス大統領、エクアドルのコレア大統領そしてアルゼンチンのキルチネール元大統領らがルラの影響を受けた政権である。貧困社会の改善に熱心に勤めたルラとチャベスの両者は良く比較されるが、チャベスは資本主義を嫌悪していたが、ルラは社会主義と資本主義を上手く噛み合わせて政権を運営させて高度成長を果たした。一方のチャベス政権の結末は昨年の180%のインフレからでも推察出来るように経済は困窮状態に終わっている。