「日本だけ石炭火力発電所を増設」の謎

 積極的に温室効果ガスを削減する。これが昨年末にパリで開催されたCOP21(気候変動枠組条約)で、国際的に合意された内容だ。欧米では、この会議の前から脱炭素をめざした動きは加速し、より多くの二酸化炭素を排出する石炭火力発電所は続々と閉鎖されてきた。  一方で日本は、ここ数年~数十年のうちに新規の石炭火力発電所の計画が相次ぎ、合計すると少なくとも原発20基分の出力が増える予定になっている。先進国の中で唯一石炭火力を増設しようとしている日本の産業界の狙いは何なのだろうか? 石炭火力発電

続々と建設される石炭火力発電所

 日本の石炭火力発電所の新設計画は、温暖化問題がクローズアップされた2009年頃に一旦止まっていた。しかし福島原発事故後、安い燃料で電力を安定供給させたい政府の政策変更がきっかけとなり、東京電力や東京ガスをはじめとして、にわかに全国各地で大型の石炭火力発電所の新設計画が動き出した。その出力の合計は、100万キロワット級原発20基分以上となっている。 ⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=83590

日本の石炭火力発電所の設備容量。青が既存の設備で赤が新規建設予定の分(作成、気候ネットワーク)

 事業者が主張するように、途上国で使われている旧型の石炭火力発電所に比べれば、建設が予定されている新型の発電所は汚染物質の排出が少ない。しかしそれは旧型に比べてのことであり、天然ガスなど他の燃料に比べれば2倍もの二酸化炭素が出てくるだけに、決して「クリーン」な電源とは言えない。  特に東京ガスや九州電力が運営して2025年以降に稼働予定の千葉袖ケ浦火力発電所(2基合わせて出力200万キロワット)は、一時は環境大臣も環境面から容認できないと苦言を呈するほど、問題点が指摘されている。
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事業者が石炭火力を新設するのはなぜ?
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地域の電力は自分たちでつくる! 「おひさまの町」飯田市、上田市の屋根借りソーラー、岐阜県いとしろの小水力、福島県会津地方で発電事業を進める会津電力、東京多摩市で活動する多摩電力、北海道から広がる市民風車。各地でさまざまな工夫をこらして、市民主導の「ご当地電力」が力強く動き出しています。